2004年07月16日

注入距離

前回の続きでキャリアが注入されたあとの進む距離について説明をする。

まずキャリア注入のところで最後に出てきた拡散方程式を使う。その最後のほうで説明したが、この拡散方程式ってのがキャリアが注入されたときの挙動を解析する式である。キャリア注入のところではHoleについての式を出したので今回もHoleについて考える。それでは、以下の式を見てもらおう。

注入距離

前回までで何回か説明してきたように、p型半導体に注入された電子、n型半導体に注入されたHoleってのは熱平衡状態よりも濃度が高いわけだから(少数キャリアだからね)、それぞれの型の半導体の中に拡散していく。

でもって、拡散されたキャリアは再結合によって減少していって、それぞれのキャリア(電子、Hole)の分布は距離xを変数とする定常的な分布になる。そうするとこの注入によって定常的な拡散電流が流れるってことになる。

上の式でHoleの拡散方程式が一番上にあるが、n型半導体の中ではHoleの分布は定常的な分布を示すのだから時間的変化はない。だから時間微分の左辺がゼロってことになる。

式中のG-Rに2番目の式を使うと、4番目の式になる。このG-Rは今まではそのままG-Rとしてきたが、キャリア注入のところで少し触れたように、Holeの寿命タウが入ったHole濃度の関数になり、それが2番目の式なのだ。

でもって、4番目の式をじっと眺めてDpとタウの積をLpの2乗とすると、このLpってのがn型半導体に注入されたHoleの拡散距離の目安になるわけだ。実際はHoleは分布になっているわけだからここの距離までって固定されるわけじゃないが、だいたい平均的にはこんなもんってことになる。

注入距離ってのは結局n型半導体中での少数キャリアであるHoleの寿命とHoleの拡散係数で決まるってことで、まあ当たり前っていえば当たり前の結果になった。ちなみにLpってのはタウとDpの積のルートね。

今回はここまで。いよいよ次回からはpnダイオードの電流電圧特性の式に入っていく。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月15日

障壁乗越え

前回の話でPN接合を作ると空乏層のところのエネルギー障壁は電位差にするとVdになることが分かった。

実はPNダイオードの整流特性っていうのはもともとはこの拡散電位が生じるってことに端を発している。PNダイオードの場合、外部から電圧をかけると、拡散電位が生じている空乏層端にほぼすべてのバイアスがかかるということが重要だ。

無バイアスの状態から、n型半導体側だったらマイナス、p型半導体側だったらプラスに電圧Vfwをかけるとする。すると空乏層部分のエネルギー障壁は拡散電位のところで説明した図と式から分かるように、qVfwだけ低くなってq(Vd-Vfw)になる。

バンド図の縦軸はエネルギーでそれも電子のエネルギーを基準にしているから、n型側にマイナスをかければ電子にとって励起される側になるからn側のバンド全体が上に上がる。だから障壁が小さくなる。

p側にプラスをかけるってことは、電子にとっては励起の反対だからバンド全体が下に下がることになる。だから障壁が小さくなる。と、こんなふうに考えると分かりやすい。

前にも出てきたと思うが、こういうのを順バイアス(Forward Bias)っていうわけだ。VfwってのはこのForWardのFWからつけた名前だ。この順バイアスの場合、障壁が低くなるのでn型半導体の多数キャリアである電子がp型半導体側に流れ込み、p型半導体の多数キャリアであるHoleはその逆に流れ込むということになる。

では、順バイアスでどのくらいのキャリアが流れ込むことができるのか考えてみよう。以下の式で説明する。

障壁乗越

まず、n型半導体中で何にもバイアスをかけない状態で拡散電位による障壁qVdを乗越えることができる電子濃度ってのは、何にもしないでもqVd以上のエネルギーを持つ電子だから、当たり前のように障壁を乗越える。っていうことは乗越えた側がp型半導体なので、p型半導体の電子濃度とn型半導体のqVd以上のエネルギーを持つ電子濃度は等しいってことになる。

これが2番目の式なのだが、そういう意味がある。でも意味を考えなくても式の遊びからこの2番目の式が出てくる。

一番上の式は拡散電位のところの最後に出てきた式の左側だけを取り出してきたものだが、これをp型側の電子濃度についてといてあげれば2番目の式になる。

で、順バイアスVfwをかけると電位差がVd-Vfwになるから、こいつを2番目の式のVdの代わりに使うとこのときの障壁を越える電子濃度になる。これが次の式だ。このときの左辺のnについているjはjumpからとった。

で、ここからがおもしろいのだが、図の2番目の式を矢印のようにn型側の電子についてといてあげて、これをこれまた矢印のように3番目の式に代入してあげる。するとあらまあ不思議、ジャンプできてしまった電子であるp型側の電子濃度は、もともとの無バイアス状態のp側の電子濃度とVfwで表されてしまう。n型側からp型側にジャンプする電子濃度を計算するのにn型側の電子濃度を考えなくて良いのだ。

同じように考えてくると、Holeについても同様の式が得られて、一番下の式のようになる。

よく見るとこれってどっちも少数キャリアのことだってのがわかる。こういう障壁を越えてキャリアが移動するのが今までに出てきたキャリアの注入ってことになる。

今回はここまで。次回は注入したあとのキャリアの進む距離。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月14日

拡散電位

さて、今回からPNダイオードにもどって、今まで説明してきた内容を使って電流電圧特性を導いていくとしよう。

そこで、最初に拡散電位の話。
これまでの話で、キャリアってのは拡散していって拡散電流ってのが生じるということが分かった。
さらに、p型半導体とn型半導体をくっつけると接合部分でキャリアの拡散が起こり空乏層ができることもわかった。
そして半導体中では発生再結合ということが起こっていて、キャリアが注入されれば急速に熱平衡状態に戻るし、熱平衡状態でも頻繁に発生再結合を繰り返している。

これらのことを考え合わせると、PN接合でできているバンドの曲がりによる空乏層周りがどういうことになっているかが分かる。つまり、最初の状態からキャリアが拡散することにより、空乏層ができ、あるところに行き着くと空乏層の両端に電位差ができ、そこで平衡状態を保っている、ということになる。

このときの電位差のことを拡散電位Vdと呼ぶ。それでは、この拡散電位とやらをもとめてみることにしよう。これまでPN接合キャリア密度のところででてきた図と式を再び使った以下の図で説明しよう。

拡散電位

まず左の図がPN接合のところで出てきた図で、n型半導体とp型半導体を用意し、くっつけたときのバンド構造を示している。すっきりさせるために電子やHoleの丸印は取り除いている。そして、n型半導体の伝導帯の下端をEcn、p型半導体の伝導帯の下端をEcpとしてある。

拡散電位に相当する部分は図中のEcp-Ecnになる。バンド図の場合はエネルギーなのでVdに電荷qをかけたものがEcp-Ecnになる。

ではまず、電子を例に考えてみよう(Holeでも逆に考えれば全く同じ)。n型半導体、p型半導体の電子濃度は右の上2式のようになる。これはキャリア密度のところでもとめた式だ。このとき注意して欲しいのはどちらの式もNcという定数が入っているということだが、これは電子に関してなので同じなのだ。キャリア密度のところのNcの中身を見てもらえればわかる。くれぐれもNa、Ndなどのドナー、アクセプタ濃度やp型だからNvなどと勘違いしないように。

次にそれぞれの電子濃度の比をとってみると3番目の式のようになる。NcとEfが消えて見事に簡単になっている。

そして、先ほど説明したVd=(Ecp-Ecn)/qにこの関係を代入してVdをもとめるとその下の式のようになる。これに、下に示した不純物半導体のキャリア密度のところで説明した関係を代入すると、その式の右辺のようになる。

これを良く見ると、拡散電位Vdってのは温度と不純物濃度(ドナー濃度、アクセプタ濃度)の関数ってことになり、常温ってことにすればDopingやインプラで注入した量が分かっていれば拡散電位は簡単に分かる。

そして、この拡散電位ってのは、電子がn型半導体からp型半導体に移動するのに必要な電圧ってことになる(当然Holeがp型半導体からn型半導体に移動するのに必要な電圧も同じ)。実はこのことが重要である。

とまあ、最初はこんな感じで終わり。この手の話になってくるとなかなか込み入って複雑になってくるので、少し話が長くなってしまう。次回はこの拡散電位からスタートしてPNダイオードの仕組みについて徐々に進む。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:20| Comment(8) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。