2004年07月22日

理想MOS構造

予告通り今回からMOSに入る。

今まで散々プロセスの説明でやったのでMOSに関する説明は省略する。

では、PNダイオードの時と同じように、まずMOSを作ったときのバンド構造がどうなるかを見ていく。以下の図を見てもらおう。

理想MOS構造

左上の図にごちゃごちゃ書いてあるものから説明していこう。ギリシャ文字でプサイとかファイとか書いてあるのは、仕事関数と呼ばれるもので、真空準位からの仕事量になっている。これは、最初は全くよくわからんが、原子などから見て遠く遠いはるかかなたの真空中から電子を持ってくるための仕事量ってな感じで適当にイメージしとけばよい。

これらの仕事関数は教科書などで一通りでてくるけれど、まあほとんど忘れてもらってかまわない。ただ一つ真性半導体のフェルミレベルEiとそのときの半導体のフェルミレベルEfsの差であるqψだけはこれから何回もでてくるので、覚えておく必要がある。

バンド構造に関しては今まで何回もやったので特に説明は要らないであろう。

それでは、今回の本題に移ろう。
図の上に理想MOS構造と一般的なMOS構造って書いてあるが、これはどういうことかというと、理想MOS構造ではMetal側のフェルミレベルEfmとSemiconductor側のフェルミレベルEfsが同じだってことだ。半導体にSi、MetalにPoly SiやAlなどを使った一般的なMOS構造ではMetal側と半導体側のフェルミレベルが一致するってことはまずない。だから理想なのである。

でも、MOSキャパシタの特性やMOSトランジスタの特性を考察したりする場合にはこの理想MOS構造を使って考える。そうしないと余計なパラメータが入ってきていろいろと面倒になるからだ。

図の上側はMOSがくっつく前のばらばらの状態でのバンド構造を示しているが、くっついて一つの物質になったときのバンド構造は下図のようになる。理想MOS構造では何のことはない全く変わらない。

しかし、一般的なMOS構造の場合は図のようにバンドが曲がってしまう。Oxideのところもひし形になっている。実際のデバイスではこうなるのだが、理屈を考えるときにはちとややこしい。このあとゲートにバイアスをかけたりするのだが、そこでわざわざバンドを曲げるのにこれでは最初から曲がっている。

ちなみに、Poly Siをn型にするとかp型にするってのは、このゲートによる初期状態でのバンドの曲がりを使うトランジスタにとって都合よくするためである。おいおいその理由が分かるであろう

とまあ、こんなわけで理想MOS構造ってのを使って考えることになる。

教科書の中にはMOSキャパシタのことをMOSダイオードと呼んでいたり、MOSじゃなくてMIS(こっちのほうが広義だからね)って呼んでいるものが多いが、ここではMOSとMOSキャパシタで統一することにする。少なくとも現場じゃあMISなんていわないし、MOSダイオードなんていわないからね。でも、デバイス系の大学の研究室あがりとか、公的に近いところの研究所などで働いていた人などはMOSダイオードって普通に言ったりしているのを聞いたことがあるから、そっち方面の現場は分からない。まあ、メーカーの現場や工場ではそうだってことにして、MOSとMOSキャパシタにする。

とまあ、さわりはこんなところで、今回は終了。次回はバイアスをかけるとどうなるか、かな?
posted by ピッコロ大魔王 at 09:51| Comment(10) | TrackBack(1) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月21日

PNダイオードのIVカーブ

前回導出したPNダイオードの電流電圧特性の式をグラフにしてみると以下の図のようになる。

PN-IVCurve

普通業界ではこういうのをIV特性とかIVカーブ(Curve)などと言っている。

それでは、このグラフをもとにIV特性を見ていこう。

まずは順バイアスから。IV特性のVを大きくしていくと指数項がむちゃくちゃでかくなるので、この式の1のところは無視できる。そうすると電流密度Jは指数関数的にでかくなり、急激に電流がドバーっと流れるようになる。これが順方向バイアスの特性だ。

まあ、とにかく電流がどばどば流れるようになる。その様子がグラフからも分かる。このとき図中のVthっていうのがダイオードの立ち上がり電圧などと呼ばれるもので、この電圧になるともう電流がじゃばじゃばであり、それ以上電圧をかけてもじゃばじゃば度は変わらない。で、このVth、拡散電位Vdにほぼ等しくて材料によって決まっている。Siの場合0.6Vぐらいだったと思う。

これは考えてみれば当たり前で、エネルギーギャップであるVdがなくなるぐらいであればバンドがまっ平らになっていくらでもキャリアが移動できる。拡散電位のところで説明したバンドギャップの図を見てもらえれば分かるだろう。

次は逆バイアスについて考えてみる。もともとこのIV特性の式を出すときに使ったキャリア濃度の式は障壁乗越えのところで説明した式を見れば分かるが、Vd-Vfwという項から出発してVfwがでてきている。従って、逆バイアスの場合には当然障壁がVr(Reverse)だけ余計に高くなるのだからVd+Vrといったぐあいにならなければならない。

そしてこれをIV特性の式に当てはめていけば、逆バイアスの場合Vのところに入る数字はマイナスになる。するとこの式の指数項は小さくなって、後ろの−1の項が無視できなくなる。逆に指数項が無視できるわけだ。すると電流は−Joになってほぼ一定になる。これがグラフのマイナス電圧側に示される曲線である。この電流密度のことを逆バイアス飽和電流密度などと呼んでいてJs(SaturationのS)などと表す。

この飽和電流はどういうことかというと、逆バイアスをかけてギャップがでかくなれば、多数キャリアは障壁を乗越えて移動できなくなるから、プラスの電流は流れないが、空乏層端にあるそれぞれの少数キャリアはギャップをころころと転がって移動することができるというわけだ。ま、要するに空乏層端にある少数キャリアの拡散電流ってことになる。

最後に降伏電圧について。グラフのマイナス側の電圧を大きくしたところで、いきなり逆方向電流がドバーっと流れ始めているところがある。これがPNジャンクション(接合)の降伏現象で、そのときの電圧を降伏電圧VB(Breakdown Voltage)と呼んでいる。よく耐圧、耐圧というがこれがそれである。実はこの降伏を利用したのが以前出てきたツェナーダイオードである。

このツェナーダイオード、グラフを見ても分かるようにまっすぐ下に伸びていて、電流の変化に対して電圧の変化が無視できるほどに小さい。だからこの素子は基準電圧を発生させるデバイスとして使われたりするわけだ。ツェナーダイオードのことを定電圧ダイオードというのはこういうわけなのだ。

はい、これでPNダイオードの話はおしまい。本当はPN接合の空乏層容量なんて話も重要なのだが、そこまでやると本当に教科書になってしまうのでやめ。そろそろ次の段階でMOSトランジスタの話に移る。次回はやっぱりMOSキャパシタかな?
posted by ピッコロ大魔王 at 10:29| Comment(4) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月20日

PNダイオードの電流電圧特性

今回で一連のややこしい算数の式はひとまず終わりになるのでもう少しだけ我慢してもらおう。

いよいよPN接合のところから始まった一連の話の集大成になる。

それでは前回の式の続きからはじめよう。注入距離のところの最後にある拡散方程式をLpを使って表し、ちゃんとxの関数として表記すると以下の第一式のようになる(今回も前回の続きなのでHoleの式)。

PN-IV特性

いろいろやってきたから忘れてしまいそうだが、この式はそもそもPN接合部分で少数キャリアが注入されたときの拡散方程式である。だからこの式に境界条件を入れてといてやれば、接合面からの距離xの関数としてキャリア濃度の式が出来上がる。あとはこの濃度の式を用いて、拡散電流のときに出てきた式から計算すればPNダイオードのキャリア注入による電流の式が出来上がるということだ。

では、順を追って話を進めていこう。

まずPNダイオードの接合面x=0でのHole濃度は障壁乗越えのところで出した式のようになる。だって、接合面での注入キャリアってのは障壁を乗越えられるキャリアに等しいわけだからね。このとき空乏層の中での再結合は無視できると考えて、そこでのキャリアの消滅は起こってないとして、障壁乗越えキャリアがまるごと使えるとする。

さらに、このPNダイオードが十分な長さを持っているとすると(そりゃあ、電子とかHoleに比してということなのだから当然十分な長さを持っている)、距離無限大ではHole濃度はPnに落ち着く。これら二つが第一式を解く境界条件なのだが、イメージ的には右図のようになる。境界条件は第一式の下にのせてある。

そんでもって、こいつを使って微分方程式を解くと4番目にある式なる。これが距離xの関数で表されるn型半導体側のHoleの濃度分布の式なわけだ。そしてこの式を使って、上に述べたように拡散電流を求めてみるとその下の式になる。これがPNダイオードのHoleの電流密度の式になる。P(x)を微分してx=0を入れてやればでてくるわけだね。

同じようなことを電子についてもやると(拡散方程式から境界条件を使って解いてやると、Holeの場合と符号が逆になったりするが、ほぼ同じような式になる)、その下の式になる。

で、全電流密度はこれらを足したものだから、一番下の式が出来上がるわけだ。このとき、拡散係数、電荷qなどの係数を一まとめしにしてJゼロなどとすると右項のようになる。そして、この中のVfwを単にVにすれば、世の中一般的な教科書にでてくるJ=Jo(exp(qV/kT)-1)なんて簡単な式になってしまう。

そう、まさにこれがPNダイオードの電流電圧特性の式なのだ。この式のVはこれまではVfwの意味があって話を進めてきたが、別に順バイアスでなくてもよくて、PNダイオードの両端にかけるバイアスであるわけだ。だからこの式というのは当然逆バイアスのときの特性も表すことができる。

こうして考えると、この式はPNダイオードにかける電圧Vによる電流を表す式になることが分かる。だから電流電圧特性なのだ。

今回はここまで。次回は上の式を使ってPNダイオードの挙動を言葉で軽く考えていく。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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