2004年09月14日

閾値電圧

久しぶりの更新です。今回はMOSキャパシタの閾値電圧について。

以前MOSトランジスタの動作の話が出てきたところで、閾値電圧Vthってのが出てきたが、その基になる話である。
そのときも説明したが、ゲート電極に電圧を加えていって反転層ができる電圧が閾値電圧である。

では、以下の図を見てもらおう。

閾値電圧

上の構造模式図とバンド図は今までMOSキャパシタの解説で使ってきたものの流用であるが、図があったほうがイメージしやすいので再掲した。そして、右側のバンド図では今までφとかψなどの文字を使って電位差を表していたが、これをVfとかVsなどに変えてしまってある。

しかし、前からよくわからないのだがゲート電極に電圧を加えて、Vthの話などになるといつの間にかφやψが消えてVってのがでてくるってのが一般的なパターンなんだけど、なんでだろう。片一方はVgとかでもう一方はψとかではいまいちピンとこないからだろうか。とりあえずここでもご多分に漏れずVで統一する。

まず、図の下の最初の式は前に出た式だが、これがゲート電極にかけた電圧がどう配分されているかという式だ。ゲート電極にかけた電圧はゲート酸化膜と基板に配分されて、反転層ができる時っていうのは空乏層がもうこれ以上伸びないっていう最大空乏層幅の時だから、第一項のQsのところはQdmaxが入るわけだ。

さらに、今まで何度も出てきたように反転層ができるときの表面電荷Vsというのは、フェルミ準位の差Vfの2倍の値になり第2項は2Vfになるわけである。

そうすると一番下の式になって、ここでXdmaxをちょっと変えると一番右の式に落ち着く。すると、誘電率とか不純物密度などでVthが表されることになり、これも材料が決まればVfがでるのでVthは計算できることになる。

とまあ、今回はここまで。キャパシタに関してはあとはCV特性の説明をして終わりにする。
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2004年08月30日

直列容量

お待たせしました(とはいっても待っている人はそんなに多くないとは思うが)、超久しぶりの更新です。いまだリハビリから抜け出せない状況ですが、オリンピックも終わったことだし、徐々にスタートしていきます。

現場の匠の技のような話だと比較的入りやすかったりするが、再スタートが物理の勉強のままだというのが、これまた億劫になる理由の一つであったりする。まあ、しかたがない、この手の話が終わるまで我慢するしかなかろう。

さて、前回最大空乏層電荷が終わったところで、今回からいよいよCV特性に入るといいましたが、まずはその準備段階でMOS構造のキャパシタンス容量の話から始める。

以下の図で説明しよう。

直列容量

まず左上のMOS構造の簡単な模式図から。構造は左側の網掛けがゲート電極(Poly SiやAlなど)で右側の点々がSi基板となっていて、あとは図に記してあるようにゲート酸化膜がサンドイッチ構造にされていて、Si基板側に空乏層ができているといった状況だ。

このときのゲート電圧をVgとしてSi基板側はグランドに接地されているとする。

この場合MOSキャパシタの容量(正確に言うと単位面積当たりの静電容量なのだが省略して容量とする)はどうなっているかというと、図の下にある記号で表したように、ゲート酸化膜の容量と空乏層の容量が直列に接続された容量になっている。

このときのゲート酸化膜容量は右上の式のように、誘電率とゲート酸化膜厚Xoxで計算できる。また、空乏層容量は誘電率と空乏層幅Xdで計算できる。

ちなみに図を見ると分かるのだが、ゲート電圧Vgはゲート酸化膜にかかる電圧VoxとSi基板にかかる電圧Vsに分散されていて、Vg=Vox+Vsってな関係になっている。

今回はやみあがり状態なのでここまで。次回に続く。次回は反転層が形成されるところの閾値電圧の話かな。
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2004年07月28日

最大空乏層電荷

前回の予告通り表面ポテンシャルの式から少しお遊び。

まずは以下の図から。

最大空乏層電荷

ここからすべて、強反転の状態について考える。
右上の前回求めた表面ポテンシャルの式をXdについて解いてみる。強反転の場合空乏層幅はXdmaxなのですでにそのように書いてある。

強反転のところで説明したように、表面ポテンシャルがψBになったときが、空乏層幅最大になる強反転の条件なので、これを使うと第2式の最右辺のようになる。

これで空乏層幅が誘電率、アクセプタ濃度、真性フェルミレベルとフェルミレベルの差ψBで表されることになり、既知の値になる。

次に左図下に示されている最大空乏層電荷を求めてみることにする。電荷部分に矢印で示されている関係を使うとQdmaxがでてくる。これが下から2番目の式である。ここに先ほど求めたXdmaxを代入すると最右辺のようになり、これまた空乏層電荷が既知の値になる。

ちなみに拡散電位のところで出てきたような式でψBをあらわすと一番下の式のようになる。そうすると、実は最大空乏層幅、最大空乏層電荷ともに真性半導体のキャリア濃度、アクセプタ濃度、誘電率、ボルツマン定数、電子の電荷から温度が決まれば求められることになる。まあ、これは当たり前っていえば当たり前なんだけどね。今までずーっとやってきた説明が分かっていれば、当たり前すぎておもしろくない。

とまあ、今回はここまで。次回からいよいよキャパシタのCV特性の話に入っていく。
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2004年07月27日

ポアソン方程式

じゃ、まあ、面倒だけれどポアソン方程式から表面ポテンシャルをもとめる話をしよう。

まずは強反転のバンド図をモデルにして説明する。以下の図を見てもらおう。

ポアソン方程式

図に新しくφ(x)ってのがあるが、これは表面ポテンシャルをxの関数としてみたものである。そんでもって、この表面ポテンシャルをもとめたいわけだ。

これをもとめるためにはポアソン方程式を使う。図の下にあるのが一般的なポアソン方程式で、3次元の関数である。左辺はポテンシャルの微分で右辺は電荷密度ってことになる。これ、よく見ると(よく見なくてもだが)何か思い当たることがある。そう、これはガウスの定理なんだよね。

なんでガウスの定理を使うのかがイメージできない人は、ファインマンの講義教科書の第3巻電磁気でも見るとよくわかる。まあ別にファインマンの教科書じゃなくてもいいのだが、昔読んで結構分かりやすかったので。

これを今回の、強反転のバンド図の場合に当てはめて、xのみの1次元で考えると右上の式になる。ここでは真空の誘電率とSiの比誘電率を使ってSiの誘電率を書き換えてある。

このとき電荷密度ρはその下の式になる。実際にはp型半導体のモデルなので、不純物濃度のNdは無視できて、Naが支配的になる。その他多数キャリアのp、少数キャリアのnは以前キャリア密度拡散電位障壁越えなどで出てきたキャリア密度の式をポテンシャルで書き換えて、φ(x)の関数になっている。めんどくさいので載せないが、知りたい人は教科書または適当にWeb検索でもして見つけて頂戴。

そして、この1次のポアソン方程式を境界条件の下に解いていく。境界条件は示してあるぐらいだったと思うが、結構適当。いまさら解く気も起こらないので、このぐらいの条件で解くと結果がでるだろうってことにしておく。初学者やまじめに勉強している人は、教科書などを参考に一度はちゃんと解いておくと良いと思う。

それぞれの境界条件の意味は、じっと見れば(じっと見なくても)分かると思うので説明はしない。

最終的に解いた式はφ(x)=A(1-x/xd)2てな形になり、この式にx=0を入れると強反転のときの表面ポテンシャルがでてくるわけだ。これが一番最後の式で、上に書いたAっていう定数がφsになってくるわけね。ちなみに強反転だからここでxdってなっているのはXdmaxのこと。

今回はここまで。次回は今回得られた表面ポテンシャルの値で少し簡単にお遊び。
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2004年07月26日

キャパシタの表面電荷

今回は前回の続きでキャパシタの表面電荷のはなし。

すこしややこしいのが何回か続いたので今回は軽く。

前回の強反転のところででてきた図をそのまま流用したのが以下の図である。

表面電荷

ここでは、空乏状態と強反転状態を例にとる。

その前に、蓄積状態では単純なコンデンサと同じだから、酸化膜厚に相当した容量が蓄積されるので、特に表面電荷について触れる必要がない。中学か高校の理科あたりで習う知識で、誘電率、膜厚、面積が分かればOKだ。

そして、普通の反転状態は強反転と同じように考えればよいからこれも省略。

まずは、空乏状態。空乏層内にはアクセプタイオンの電荷のみが存在して、その電荷密度はアクセプタ濃度と空乏層幅をかけたものになる。これが電極の表面電荷の大きさと等しくなるわけだ(大きさだからそれぞれの絶対値ね)。

ちなみに図の電荷密度の大きさを表す4角形がつりあっていないが、電極側の表面電荷はもっとずーっと上に伸びている。普通は〜こいつが二つ重なった間を飛ばすよって記号が入っている。

一方、強反転状態のほうはというと、同じく空乏層内のアクセプタイオンによる電荷と、さらに反転層の表面電荷が加わる。そのイメージは図のとおりである。電極側の表面電荷と空乏層電荷+反転層電荷がつりあう。

次はいよいよその反転層の電荷を求めるために、表面ポテンシャルを求める話だったり、ポアソン方程式の話に移るわけだが、今回はここまで。
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2004年07月23日

強反転

それでは、前回でてきた理想MOS構造をベースに話を進めていこう。今後はすべて理想MOS構造が前提である。

今回はMOSキャパシタにバイアスをかけるとどうなるかを、バンド図を用いて説明する。以下の図を見てもらおう。

強反転

まずは一番左上の無バイアスの状態がスタートである。特に触れていないが、バンド図からわかるようにこれはp型半導体のキャパシタであり、Holeとアクセプタイオンがたくさんあることになる。

そしてゲート(トランジスタじゃないのでゲートって言うのも辺なのだが、今後もゲートって呼ぶ)にマイナスのバイアスをかけた場合が蓄積状態である。普通はAccumulation(アキュムレーション)ということが多い。

これはどういうことかというと、図の白抜きの丸が半導体表面のバンドが曲がったところに集まり、電子が電極表面に集まることになって、よく知られているコンデンサに電気を貯めた状態になるわけだ。

次はゲートにプラスのバイアスをかけた場合である。最初は軽くバイアスをかけた場合で、これが空乏状態で一般にはDepletion(デプレッション)という。これは言葉のとおり、半導体表面に空乏層ができるのだ。そして、半導体側のバンドは下に曲がる。下に曲がるってことは、さっきのAccumulatinと違ってHoleが存在しにくくなるわけだから(だから空乏化するわけなんだけど)Holeが蓄積されることもない。そして電極表面にはHoleが集まることになる。

このときの空乏層幅はXdとして、表面のバンドの曲がりの大きさをφsと呼ぶことが多い。このφsって通常表面ポテンシャルって言う。ちなみにここのバンド図では電荷qは省略して、縦軸はポテンシャルとか電位になっている。

じゃあ、このDepletion状態にさらにプラスのバイアスをかけていくとどうなるかっていうと、次の反転状態、Inversion(インバージョン)になるわけだ。これはどういう状態かというと、言葉どおりに反転した層が現れるということだ。

つまり、p型半導体なのに電子がいっぱい浮き出てきた層が現れるということ。バンド図で半導体表面にEc上灰色の丸があり電子と説明してあるが、これがそうである。要するにバンドが下に曲がることにより、真性半導体のフェルミレベルが今のp型半導体のフェルミレベルを下回ってしまうので、その下回った部分はほっといても電子に励起されてしまうわけだ。

もうお分かりと思うが、この反転層が現れる条件というのは、図の下の不等式のように、表面ポテンシャルφsがψBよりも大きくなったときである。上に言葉で説明した真性半導体のフェルミレベルと現在の半導体のフェルミレベルの関係だ。

このとき空乏層幅XdはDepletionのときよりも大きく伸びている。また、電極表面のHoleもさらに増えている。これは電極表面の電荷と半導体の反転層電荷、アクセプタイオンによる電荷とつりあわないといけないからなのだが、この辺の表面電荷の話は次回する。

そんでもって、もっともっと電圧をかけていくとどうなるかっていうと、次の強反転、Strong Inversoinになるわけだ。

強反転の場合は、条件は反転の場合とほぼ同じだが、唯一条件があって、それは表面ポテンシャルφsがψBの2倍以上にならないといけないってことだ。このψBの2倍以上ってのが大事である。真性半導体のフェルミレベルが現在の半導体のフェルミレベルを下回って、さらにその変化分をもう一度下まわるってことになる。

このとき表面の反転層にはさらに電子がたまっている。そして、この強反転の特徴はもうこれ以上空乏層が伸びないってことだ。つまり、φs=2ψBのときが空乏層幅の最大Xdmaxになるわけだ。それ以降は、いくらバイアスをかけても空乏層は伸びない。これはなんでかっていうと、バンドがもう曲がらないからである。

このあたりまでくると、バンドが少し曲がるだけで反転層の電子が指数関数的に増えるから、電圧をかけても電子をバンドを曲げなくても電子を増やすことによってつり合いが取れる。

トランジスタではこの反転層の電子がスパーっと掃けることによりドレイン電流になるわけなんだけど、そうすると前に出てきたVth(閾値電圧)ってのが上の説明でどんなものかだんだん分かってきただろう。そのうちもっとよくわかるようになる。

では今回はここまで。次回はさっき触れた、表面電荷のつりあい。
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2004年07月22日

理想MOS構造

予告通り今回からMOSに入る。

今まで散々プロセスの説明でやったのでMOSに関する説明は省略する。

では、PNダイオードの時と同じように、まずMOSを作ったときのバンド構造がどうなるかを見ていく。以下の図を見てもらおう。

理想MOS構造

左上の図にごちゃごちゃ書いてあるものから説明していこう。ギリシャ文字でプサイとかファイとか書いてあるのは、仕事関数と呼ばれるもので、真空準位からの仕事量になっている。これは、最初は全くよくわからんが、原子などから見て遠く遠いはるかかなたの真空中から電子を持ってくるための仕事量ってな感じで適当にイメージしとけばよい。

これらの仕事関数は教科書などで一通りでてくるけれど、まあほとんど忘れてもらってかまわない。ただ一つ真性半導体のフェルミレベルEiとそのときの半導体のフェルミレベルEfsの差であるqψだけはこれから何回もでてくるので、覚えておく必要がある。

バンド構造に関しては今まで何回もやったので特に説明は要らないであろう。

それでは、今回の本題に移ろう。
図の上に理想MOS構造と一般的なMOS構造って書いてあるが、これはどういうことかというと、理想MOS構造ではMetal側のフェルミレベルEfmとSemiconductor側のフェルミレベルEfsが同じだってことだ。半導体にSi、MetalにPoly SiやAlなどを使った一般的なMOS構造ではMetal側と半導体側のフェルミレベルが一致するってことはまずない。だから理想なのである。

でも、MOSキャパシタの特性やMOSトランジスタの特性を考察したりする場合にはこの理想MOS構造を使って考える。そうしないと余計なパラメータが入ってきていろいろと面倒になるからだ。

図の上側はMOSがくっつく前のばらばらの状態でのバンド構造を示しているが、くっついて一つの物質になったときのバンド構造は下図のようになる。理想MOS構造では何のことはない全く変わらない。

しかし、一般的なMOS構造の場合は図のようにバンドが曲がってしまう。Oxideのところもひし形になっている。実際のデバイスではこうなるのだが、理屈を考えるときにはちとややこしい。このあとゲートにバイアスをかけたりするのだが、そこでわざわざバンドを曲げるのにこれでは最初から曲がっている。

ちなみに、Poly Siをn型にするとかp型にするってのは、このゲートによる初期状態でのバンドの曲がりを使うトランジスタにとって都合よくするためである。おいおいその理由が分かるであろう

とまあ、こんなわけで理想MOS構造ってのを使って考えることになる。

教科書の中にはMOSキャパシタのことをMOSダイオードと呼んでいたり、MOSじゃなくてMIS(こっちのほうが広義だからね)って呼んでいるものが多いが、ここではMOSとMOSキャパシタで統一することにする。少なくとも現場じゃあMISなんていわないし、MOSダイオードなんていわないからね。でも、デバイス系の大学の研究室あがりとか、公的に近いところの研究所などで働いていた人などはMOSダイオードって普通に言ったりしているのを聞いたことがあるから、そっち方面の現場は分からない。まあ、メーカーの現場や工場ではそうだってことにして、MOSとMOSキャパシタにする。

とまあ、さわりはこんなところで、今回は終了。次回はバイアスをかけるとどうなるか、かな?
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2004年07月21日

PNダイオードのIVカーブ

前回導出したPNダイオードの電流電圧特性の式をグラフにしてみると以下の図のようになる。

PN-IVCurve

普通業界ではこういうのをIV特性とかIVカーブ(Curve)などと言っている。

それでは、このグラフをもとにIV特性を見ていこう。

まずは順バイアスから。IV特性のVを大きくしていくと指数項がむちゃくちゃでかくなるので、この式の1のところは無視できる。そうすると電流密度Jは指数関数的にでかくなり、急激に電流がドバーっと流れるようになる。これが順方向バイアスの特性だ。

まあ、とにかく電流がどばどば流れるようになる。その様子がグラフからも分かる。このとき図中のVthっていうのがダイオードの立ち上がり電圧などと呼ばれるもので、この電圧になるともう電流がじゃばじゃばであり、それ以上電圧をかけてもじゃばじゃば度は変わらない。で、このVth、拡散電位Vdにほぼ等しくて材料によって決まっている。Siの場合0.6Vぐらいだったと思う。

これは考えてみれば当たり前で、エネルギーギャップであるVdがなくなるぐらいであればバンドがまっ平らになっていくらでもキャリアが移動できる。拡散電位のところで説明したバンドギャップの図を見てもらえれば分かるだろう。

次は逆バイアスについて考えてみる。もともとこのIV特性の式を出すときに使ったキャリア濃度の式は障壁乗越えのところで説明した式を見れば分かるが、Vd-Vfwという項から出発してVfwがでてきている。従って、逆バイアスの場合には当然障壁がVr(Reverse)だけ余計に高くなるのだからVd+Vrといったぐあいにならなければならない。

そしてこれをIV特性の式に当てはめていけば、逆バイアスの場合Vのところに入る数字はマイナスになる。するとこの式の指数項は小さくなって、後ろの−1の項が無視できなくなる。逆に指数項が無視できるわけだ。すると電流は−Joになってほぼ一定になる。これがグラフのマイナス電圧側に示される曲線である。この電流密度のことを逆バイアス飽和電流密度などと呼んでいてJs(SaturationのS)などと表す。

この飽和電流はどういうことかというと、逆バイアスをかけてギャップがでかくなれば、多数キャリアは障壁を乗越えて移動できなくなるから、プラスの電流は流れないが、空乏層端にあるそれぞれの少数キャリアはギャップをころころと転がって移動することができるというわけだ。ま、要するに空乏層端にある少数キャリアの拡散電流ってことになる。

最後に降伏電圧について。グラフのマイナス側の電圧を大きくしたところで、いきなり逆方向電流がドバーっと流れ始めているところがある。これがPNジャンクション(接合)の降伏現象で、そのときの電圧を降伏電圧VB(Breakdown Voltage)と呼んでいる。よく耐圧、耐圧というがこれがそれである。実はこの降伏を利用したのが以前出てきたツェナーダイオードである。

このツェナーダイオード、グラフを見ても分かるようにまっすぐ下に伸びていて、電流の変化に対して電圧の変化が無視できるほどに小さい。だからこの素子は基準電圧を発生させるデバイスとして使われたりするわけだ。ツェナーダイオードのことを定電圧ダイオードというのはこういうわけなのだ。

はい、これでPNダイオードの話はおしまい。本当はPN接合の空乏層容量なんて話も重要なのだが、そこまでやると本当に教科書になってしまうのでやめ。そろそろ次の段階でMOSトランジスタの話に移る。次回はやっぱりMOSキャパシタかな?
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2004年07月20日

PNダイオードの電流電圧特性

今回で一連のややこしい算数の式はひとまず終わりになるのでもう少しだけ我慢してもらおう。

いよいよPN接合のところから始まった一連の話の集大成になる。

それでは前回の式の続きからはじめよう。注入距離のところの最後にある拡散方程式をLpを使って表し、ちゃんとxの関数として表記すると以下の第一式のようになる(今回も前回の続きなのでHoleの式)。

PN-IV特性

いろいろやってきたから忘れてしまいそうだが、この式はそもそもPN接合部分で少数キャリアが注入されたときの拡散方程式である。だからこの式に境界条件を入れてといてやれば、接合面からの距離xの関数としてキャリア濃度の式が出来上がる。あとはこの濃度の式を用いて、拡散電流のときに出てきた式から計算すればPNダイオードのキャリア注入による電流の式が出来上がるということだ。

では、順を追って話を進めていこう。

まずPNダイオードの接合面x=0でのHole濃度は障壁乗越えのところで出した式のようになる。だって、接合面での注入キャリアってのは障壁を乗越えられるキャリアに等しいわけだからね。このとき空乏層の中での再結合は無視できると考えて、そこでのキャリアの消滅は起こってないとして、障壁乗越えキャリアがまるごと使えるとする。

さらに、このPNダイオードが十分な長さを持っているとすると(そりゃあ、電子とかHoleに比してということなのだから当然十分な長さを持っている)、距離無限大ではHole濃度はPnに落ち着く。これら二つが第一式を解く境界条件なのだが、イメージ的には右図のようになる。境界条件は第一式の下にのせてある。

そんでもって、こいつを使って微分方程式を解くと4番目にある式なる。これが距離xの関数で表されるn型半導体側のHoleの濃度分布の式なわけだ。そしてこの式を使って、上に述べたように拡散電流を求めてみるとその下の式になる。これがPNダイオードのHoleの電流密度の式になる。P(x)を微分してx=0を入れてやればでてくるわけだね。

同じようなことを電子についてもやると(拡散方程式から境界条件を使って解いてやると、Holeの場合と符号が逆になったりするが、ほぼ同じような式になる)、その下の式になる。

で、全電流密度はこれらを足したものだから、一番下の式が出来上がるわけだ。このとき、拡散係数、電荷qなどの係数を一まとめしにしてJゼロなどとすると右項のようになる。そして、この中のVfwを単にVにすれば、世の中一般的な教科書にでてくるJ=Jo(exp(qV/kT)-1)なんて簡単な式になってしまう。

そう、まさにこれがPNダイオードの電流電圧特性の式なのだ。この式のVはこれまではVfwの意味があって話を進めてきたが、別に順バイアスでなくてもよくて、PNダイオードの両端にかけるバイアスであるわけだ。だからこの式というのは当然逆バイアスのときの特性も表すことができる。

こうして考えると、この式はPNダイオードにかける電圧Vによる電流を表す式になることが分かる。だから電流電圧特性なのだ。

今回はここまで。次回は上の式を使ってPNダイオードの挙動を言葉で軽く考えていく。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月16日

注入距離

前回の続きでキャリアが注入されたあとの進む距離について説明をする。

まずキャリア注入のところで最後に出てきた拡散方程式を使う。その最後のほうで説明したが、この拡散方程式ってのがキャリアが注入されたときの挙動を解析する式である。キャリア注入のところではHoleについての式を出したので今回もHoleについて考える。それでは、以下の式を見てもらおう。

注入距離

前回までで何回か説明してきたように、p型半導体に注入された電子、n型半導体に注入されたHoleってのは熱平衡状態よりも濃度が高いわけだから(少数キャリアだからね)、それぞれの型の半導体の中に拡散していく。

でもって、拡散されたキャリアは再結合によって減少していって、それぞれのキャリア(電子、Hole)の分布は距離xを変数とする定常的な分布になる。そうするとこの注入によって定常的な拡散電流が流れるってことになる。

上の式でHoleの拡散方程式が一番上にあるが、n型半導体の中ではHoleの分布は定常的な分布を示すのだから時間的変化はない。だから時間微分の左辺がゼロってことになる。

式中のG-Rに2番目の式を使うと、4番目の式になる。このG-Rは今まではそのままG-Rとしてきたが、キャリア注入のところで少し触れたように、Holeの寿命タウが入ったHole濃度の関数になり、それが2番目の式なのだ。

でもって、4番目の式をじっと眺めてDpとタウの積をLpの2乗とすると、このLpってのがn型半導体に注入されたHoleの拡散距離の目安になるわけだ。実際はHoleは分布になっているわけだからここの距離までって固定されるわけじゃないが、だいたい平均的にはこんなもんってことになる。

注入距離ってのは結局n型半導体中での少数キャリアであるHoleの寿命とHoleの拡散係数で決まるってことで、まあ当たり前っていえば当たり前の結果になった。ちなみにLpってのはタウとDpの積のルートね。

今回はここまで。いよいよ次回からはpnダイオードの電流電圧特性の式に入っていく。
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2004年07月15日

障壁乗越え

前回の話でPN接合を作ると空乏層のところのエネルギー障壁は電位差にするとVdになることが分かった。

実はPNダイオードの整流特性っていうのはもともとはこの拡散電位が生じるってことに端を発している。PNダイオードの場合、外部から電圧をかけると、拡散電位が生じている空乏層端にほぼすべてのバイアスがかかるということが重要だ。

無バイアスの状態から、n型半導体側だったらマイナス、p型半導体側だったらプラスに電圧Vfwをかけるとする。すると空乏層部分のエネルギー障壁は拡散電位のところで説明した図と式から分かるように、qVfwだけ低くなってq(Vd-Vfw)になる。

バンド図の縦軸はエネルギーでそれも電子のエネルギーを基準にしているから、n型側にマイナスをかければ電子にとって励起される側になるからn側のバンド全体が上に上がる。だから障壁が小さくなる。

p側にプラスをかけるってことは、電子にとっては励起の反対だからバンド全体が下に下がることになる。だから障壁が小さくなる。と、こんなふうに考えると分かりやすい。

前にも出てきたと思うが、こういうのを順バイアス(Forward Bias)っていうわけだ。VfwってのはこのForWardのFWからつけた名前だ。この順バイアスの場合、障壁が低くなるのでn型半導体の多数キャリアである電子がp型半導体側に流れ込み、p型半導体の多数キャリアであるHoleはその逆に流れ込むということになる。

では、順バイアスでどのくらいのキャリアが流れ込むことができるのか考えてみよう。以下の式で説明する。

障壁乗越

まず、n型半導体中で何にもバイアスをかけない状態で拡散電位による障壁qVdを乗越えることができる電子濃度ってのは、何にもしないでもqVd以上のエネルギーを持つ電子だから、当たり前のように障壁を乗越える。っていうことは乗越えた側がp型半導体なので、p型半導体の電子濃度とn型半導体のqVd以上のエネルギーを持つ電子濃度は等しいってことになる。

これが2番目の式なのだが、そういう意味がある。でも意味を考えなくても式の遊びからこの2番目の式が出てくる。

一番上の式は拡散電位のところの最後に出てきた式の左側だけを取り出してきたものだが、これをp型側の電子濃度についてといてあげれば2番目の式になる。

で、順バイアスVfwをかけると電位差がVd-Vfwになるから、こいつを2番目の式のVdの代わりに使うとこのときの障壁を越える電子濃度になる。これが次の式だ。このときの左辺のnについているjはjumpからとった。

で、ここからがおもしろいのだが、図の2番目の式を矢印のようにn型側の電子についてといてあげて、これをこれまた矢印のように3番目の式に代入してあげる。するとあらまあ不思議、ジャンプできてしまった電子であるp型側の電子濃度は、もともとの無バイアス状態のp側の電子濃度とVfwで表されてしまう。n型側からp型側にジャンプする電子濃度を計算するのにn型側の電子濃度を考えなくて良いのだ。

同じように考えてくると、Holeについても同様の式が得られて、一番下の式のようになる。

よく見るとこれってどっちも少数キャリアのことだってのがわかる。こういう障壁を越えてキャリアが移動するのが今までに出てきたキャリアの注入ってことになる。

今回はここまで。次回は注入したあとのキャリアの進む距離。
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2004年07月14日

拡散電位

さて、今回からPNダイオードにもどって、今まで説明してきた内容を使って電流電圧特性を導いていくとしよう。

そこで、最初に拡散電位の話。
これまでの話で、キャリアってのは拡散していって拡散電流ってのが生じるということが分かった。
さらに、p型半導体とn型半導体をくっつけると接合部分でキャリアの拡散が起こり空乏層ができることもわかった。
そして半導体中では発生再結合ということが起こっていて、キャリアが注入されれば急速に熱平衡状態に戻るし、熱平衡状態でも頻繁に発生再結合を繰り返している。

これらのことを考え合わせると、PN接合でできているバンドの曲がりによる空乏層周りがどういうことになっているかが分かる。つまり、最初の状態からキャリアが拡散することにより、空乏層ができ、あるところに行き着くと空乏層の両端に電位差ができ、そこで平衡状態を保っている、ということになる。

このときの電位差のことを拡散電位Vdと呼ぶ。それでは、この拡散電位とやらをもとめてみることにしよう。これまでPN接合キャリア密度のところででてきた図と式を再び使った以下の図で説明しよう。

拡散電位

まず左の図がPN接合のところで出てきた図で、n型半導体とp型半導体を用意し、くっつけたときのバンド構造を示している。すっきりさせるために電子やHoleの丸印は取り除いている。そして、n型半導体の伝導帯の下端をEcn、p型半導体の伝導帯の下端をEcpとしてある。

拡散電位に相当する部分は図中のEcp-Ecnになる。バンド図の場合はエネルギーなのでVdに電荷qをかけたものがEcp-Ecnになる。

ではまず、電子を例に考えてみよう(Holeでも逆に考えれば全く同じ)。n型半導体、p型半導体の電子濃度は右の上2式のようになる。これはキャリア密度のところでもとめた式だ。このとき注意して欲しいのはどちらの式もNcという定数が入っているということだが、これは電子に関してなので同じなのだ。キャリア密度のところのNcの中身を見てもらえればわかる。くれぐれもNa、Ndなどのドナー、アクセプタ濃度やp型だからNvなどと勘違いしないように。

次にそれぞれの電子濃度の比をとってみると3番目の式のようになる。NcとEfが消えて見事に簡単になっている。

そして、先ほど説明したVd=(Ecp-Ecn)/qにこの関係を代入してVdをもとめるとその下の式のようになる。これに、下に示した不純物半導体のキャリア密度のところで説明した関係を代入すると、その式の右辺のようになる。

これを良く見ると、拡散電位Vdってのは温度と不純物濃度(ドナー濃度、アクセプタ濃度)の関数ってことになり、常温ってことにすればDopingやインプラで注入した量が分かっていれば拡散電位は簡単に分かる。

そして、この拡散電位ってのは、電子がn型半導体からp型半導体に移動するのに必要な電圧ってことになる(当然Holeがp型半導体からn型半導体に移動するのに必要な電圧も同じ)。実はこのことが重要である。

とまあ、最初はこんな感じで終わり。この手の話になってくるとなかなか込み入って複雑になってくるので、少し話が長くなってしまう。次回はこの拡散電位からスタートしてPNダイオードの仕組みについて徐々に進む。
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2004年07月13日

キャリア注入

さて、いよいよ大詰めである。今回は総仕上げでキャリアを注入した場合の拡散方程式の話をする。

前回の発生と再結合のところで説明したように、キャリアの注入を行うと再結合によって急速に注入キャリアは熱平衡状態に戻る。この時、注入されたキャリアは拡散するわけだが、そうするとキャリアが注入されたことにより、拡散電流と発生再結合電流が生じることになる。

その考察を以下の図で説明しよう。

キャリア注入方程式

まず、図のような直方体の半導体のモデルを考えて、ある微小領域を通り過ぎるキャリアの時間変化を考える。図の断面積をS、微小距離をdxとする。ここではn型半導体中のHoleの変化を考える。

この微小空間を通り過ぎるキャリアの時間変化の総量はこの空間の体積をかけたものになる。体積は断面積Sと微小距離dxをかければよい。

そして、その中身はどうなっているかというと、発生と再結合の差(これはすでに時間変化)に体積をかけたものとこの微小空間の入り口と出口での電流密度の差に断面積をかけたものを足したものである。これが図下の式である。

電流密度には電荷がすでに掛け算されているので、こちらは電荷qで割る必要がある。

でもって、この式を整理しちゃうと2番目の式になる。すっきりしました。そして第2項のところに注目して、電流密度を拡散電流のところで出てきた式でHole濃度に変えてしまう。

すると、あら不思議、第2項は拡散係数のついたHole濃度の2回微分で表されてしまい、この方程式自体がHole濃度の偏微分方程式になっちゃった。これが3番目の式である。実際にはG-RもHoleの寿命タウが入ったHole濃度の式になるから、この式全体が定数項のない偏微分方程式になっている。

実はこれがn型半導体にHoleが注入されたときのHoleの挙動を解析することができる「Holeの拡散方程式」と呼ばれるものである。

p型半導体中の電子の場合は多少符号の違いはでてくるが上でやったのと同じように考えればできる。これらの拡散方程式っていうのは非常に重要な方程式である。

これでおしまい。長かったがこれでひとまず電流関係の仕組みが終わったので、次はpnダイオードのところに戻って、いよいよ電流電圧特性の話しに入る。
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2004年07月12日

発生と再結合

前回までドリフト電流と拡散電流の話をしてきたが、そこでも少し触れた電子の発生と再結合の話をしていく。

この発生と再結合は電流の大きな要素ではないが、バイポーラトランジスタなどで少数キャリアが注入された場合などの挙動を理解するために重要なベースとなる。

直接遷移と間接遷移のところで少し説明したが、半導体では普段の状態の熱平衡状態でも電子は励起されて価電子帯から伝導体に移ったり、その後エネルギーを光などで放出しながら価電子帯に戻るなんて事が繰り返されている。こういうのをそれぞれ発生と再結合という。伝導体に移るほうが発生、戻るほうが再結合でその様子が以下の図で分かる。

発生再結合

図中の左上にあるのが発生再結合の様子である。この場合はダイレクトに伝導体と価電子帯でやり取りがあり直接再結合という。これに対して、途中でバケツリレーのように受け渡し場所の準位(エネルギー準位)があるような場合が右上図である。

こういうのを間接再結合という。この間接再結合は図のように再結合中心というところで再結合が行われることになる。この場合はn型半導体で再結合中心の準位Erがドナー準位Ed、フェルミレベルEfより下に位置している。

ちなみに電子とHoleの再結合は直接再結合よりも間接再結合で起こる場合のほうが多い。そしてここにでてくる一時避難的な準位っていうのは金属などの不純物があったりするとできるものである。逆に言うとウェハーに金属汚染などが起こると、この準位ってのがいっぱいできて電子のトラップ(一時避難的に)などが起こりリーク電流やVthの変化などを起こしまずいことになる。

これが、ウェハーの重金属汚染などがだめだよといわれる大きな理由の一つである。こういう準位のことを捕獲中心とかいう。上にも書いたがよくトラップという言葉を使うが電子がこの準位に捕らえられてしまうからトラップなのである。

なんとか中心ってのは他には発生中心なんてのもあるけど、これはまあいいでしょう。

さてさていよいよ本題、発生再結合による電子(キャリア)の流れはどうなるかっていうと、その濃度の時間変化を見ればよい。一般的に発生のほうの量をG、再結合のほうの量をRと表すのだが、この差が電子の量の変化だから図中の真ん中の式のようになる。実際にGは温度の関数でRは電子とHoleの濃度に比例するっていう具体的な式もあるのだが、それは教科書にお任せ。

そして、例えば電子の挙動を見るためにp型半導体に電子をたくさん注入した場合を考える。こういうのを過剰注入という。これがその下の式で表されるのだが、本来少数キャリアである電子の過剰注入ぶんのデルタnの時間変化は、上の式と同じで過剰注入による発生とその後の再結合の差になるわけだ。

で、この場合少数キャリアである電子がたくさん入ってきたわけだから、再結合のためのHoleはp型半導体ということでたっぷりある。そうするとこの時間変化は入ってきた過剰キャリアの濃度デルタnに比例する。こいつをといてあげて、比例定数Tの逆数をタウにしてあげるとその下の式になる。

この式を見ると分かるように、少数キャリアを過剰注入すると、キャリアは再結合により時間とともに指数関数的に減少することが分かる。この式をグラフに書いてみるとよくわかる。これが大事で、少数キャリアを注入するとあっという間に再結合で熱平衡状態に戻るってことだ。だからこのときだけ電流が流れることになる。こんなふうにして発生と再結合による電流が説明できる。

とまあこんな感じで今回はおわり。次ももうちょっと再結合関係。
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2004年07月09日

電流密度

今回はさらに超簡単で、電流密度の最後のまとめをする。

前回、前々回やってきたことでドリフト電流拡散電流が分かった。

すると、この2大電流密度をあわせてあげれば、半導体中の電流密度がわかることになる。で、まあ、どうやってあわせるかというと、電子は電子、HoleはHoleでドリフト電流と拡散電流をあわせるわけだ。

するとこうなる。

電流の式

これがかの有名な電子の電流密度の式とHoleの電流密度の式である。

電流の話になると実際には前にも触れたように、発生(生成)と再結合による電流も考慮に入れる必要もあるのだが、まあほとんどの場合上の式で大丈夫だろう。

予告通り超簡単で、今回はここまで。次回は発生と再結合の話。
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2004年07月08日

拡散電流

今回は拡散電流の話。

水は高きところから低きところに流れるじゃないけど、拡散って現象がある。だいたい、気体でも液体でも固体でも濃度の高いところから濃度の低いところに移動していって最後に同じ濃度になって落ち着く。こういうのを拡散っていうんだけど、インクを水にたらす例などでほとんどの人は知っているだろう。

この拡散によって生じる電流が拡散電流だ。前回やったドリフト電流と今回の拡散電流が半導体中の電流を構成する2大主要電流である。

以下の図を使って非常に簡単に説明していく。

拡散電流

まず、図のように左から右にキャリアが拡散していくとする。このときの、単位面積あたり単位時間内に通り過ぎるキャリアの数を求めれば電流密度になる。

で、この数をどんなふうにで求めるかというと、単位時間単位面積を通る数はキャリアの濃度勾配に比例するって法則から求める。

そうして出てきた式が図の右側にある式だ。式中の電子とHoleによる符号の違いは、電子の電荷がマイナスであることと、電流の向きを考えれば分かる。Dは拡散の話には必ず出てくる拡散係数と呼ばれる比例定数である。

電子のみまたはHoleのみが拡散する場合はそれぞれの式を使えばよく、どちらも拡散電流に寄与している場合はドリフト電流のときと同じように全電流として足してしまえばよい。

今回は超簡単で、ここまで。次も超簡単に電流密度のまとめでその後は電子の発生と再結合による電流かな。
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2004年07月07日

ドリフト電流

今回はいよいよドリフト電流の話。

前回の移動度の話で電界をかけると電子は逆方向に引っぱられるというのがでてきた。じゃあ、ここで真性半導体に電界をかけたらどうなるだろうか。

以下の図で説明しよう。

ドリフト電流

この図のように、真性半導体に電界をかけると電子は反対方向に、Holeは順方向に移動する。このときのそれぞれVnとVpっていうドリフト速度で移動する。

さて、ここでキャリアの移動による電流密度を求めてみよう。電流密度ってのは単位時間当たりに単位面積を通り過ぎる電荷の量のことだから、電荷qとそのときのキャリア密度(ここではn、pね)とそのキャリアの速度を掛け算してあげれば出てくる。こいつがドリフト電流と呼ばれているものに相当する。

これが図の下の2式の第2辺までになる。そして、移動度のところで出てきた式から速度Vを移動度で表すと、一番右の第3辺になる。ここで、電子の式のマイナスは逆極性だからマイナスなんだけど、移動度の式にマイナスがくっついてるから最後にはマイナスが取れる。これでもうお分かりのように、前回説明しなかったHole側の移動度の式には、マイナスがくっついていない。

普通これら2式がキャリアの電流密度の式と呼ばれるものである。

そして、この場合の全電流というのは電子とHoleの移動をあわせたものだから全電流密度ってのはその下の式のようになる。ここで電界の前にあるものをまとめてしまったものが導電率ってことになる。

そもそも電流って電界を強くすれば多く流れるわけだし、それぞれの導体の材料の違いや材料の状態によって流れやすいものと流れにくいものがあるわけだから、ここの電界と導電率に比例するって式はイメージしやすいだろう。そう考えればいきなり出てくる導電率って言葉のイメージも理解しやすいと思う。

そして、最後に載せたのは教科書などではこの話のところでは必ず出てくる、導電率の逆数が抵抗率っていうやつの関係だ。半導体のデバイス関係に携わっていると結構抵抗率って言葉が良く使われるので、一応覚えておいたほうが良い。

ちなみに、今回の話は真性半導体を例にとってやったのだが、不純物半導体では当然多数キャリアのほうが支配的になるので、最後の導電率などは電子ならn側の項だけ、Holeならp側の項だけってことになる。

今回はこれでおしまい。なんとなくドリフト電流ってのが分かったでしょう。次はやっぱり拡散電流の話かな。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月06日

移動度

まず、ちぶろぐ様が初トラックバックをしてくれました。どうもありがとうございます。でも、いまだにトラックバックがよくわからないピッコロです。トラックバック先の記事に行っても素記事のリンクとかがあるわけではないんですね。この辺が良く分からない。

さて、今回からドリフト電流について述べるが、とりあえず牛歩で進むので移動度の話から。

電子とHoleの両方についてやらなければいけないのだが、ほぼ同じ考えで裏返しの話なので、電子を例に話を進める。

普段半導体の中の自由電子は熱運動(ブラウン運動のようなもの)であっちこっち移動しているのだが、ランダムな動きなので巨視的に見て平均を取ると移動してないように見える。

それに対して、電界のある場合にはちょっと違った挙動が起こる。電解があると電子は−qEって力を受けて電界の逆方向に引っぱられる。ほっとけばこの電界によって電子が加速されるので、速度はぐんぐん上がるはずだが、実際はドナーやアクセプタという不純物原子などにぶつかるのを繰り返すから電界に依存(比例)した平均速度になる。この様子を以下の図に示した。

移動度

この左上の図が電界による電子の挙動である。でもって、電界から電子に与えられる力と運動量の関係が下の式である。

ここにあるτは平均衝突時間というもので不純物原子などにぶつかる間の動いている時間の平均である。平均緩和時間と言うほうが一般的かもしれないが、衝突時間のほうがイメージしやすいと思うのでここでは衝突時間を使う。

また、vはドリフト速度と呼ばれるもので、電界によって生じた速度成分である。なんでこんなふうに分けるかというと、上にも述べたようにもともと熱運動などによる速度成分もあるからである。

そして、この式をvについてといてみると、その下の式になる。このときのEの前にある部分をまとめてμとして、これを移動度という。昔は移動度じゃなくて易動度なんて呼んでたような気もする。どっちかというと易動度のほうがイメージとしては良いかもしれない。動きやすさって感じだからね。

移動度ってのは半導体材料が決まると決まってくるパラメータで、Siの場合電子の移動度のほうがHoleの移動度よりも高い(はず)。800に対する500ぐらいの違いだっけなあ?300だっけなあ?忘れちゃった。

高速処理をしなければならないようなデバイスは高移動度のほうが処理速度が上がってよろしい。例えば衛星放送のパラボラ系に使われているHEMTなんてのは化合物半導体で作った高移動度のデバイスだ。なんせ名前がHigh Electron Mobility TransistorでHEMTだから。こいつはかの有名な三村さんという人が開発したものだ。

とまあ、こんな感じのを移動度という。今後MOSトランジスタの話などにも頻繁に出てくるので、よく覚えておいたほうが良い。

今回はここまで、次回はドリフト電流そのものの話。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:05| Comment(4) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月05日

不純物半導体のキャリア濃度

前回の続きで、不純物半導体のキャリア濃度の話をする。

前回、質量作用の法則を説明したが、電子濃度とHole濃度を掛け算したものが一定なら、そこから不純物半導体のキャリア濃度がもとめられる。

まずn型半導体の場合。
この場合、電子の濃度っていうのはドナーの濃度とほぼ同じになる。なぜなら、真性半導体の電子とHoleの濃度がそれぞれ10の10乗オーダーのレベルだとすると、不純物半導体に注入されている不純物濃度はそれよりも少なくとも5桁ぐらいは大きいからだ。

だから、このときの電子濃度はもともと真性半導体の時にあった濃度などは無視されて、ドナーの濃度がそのまま電子濃度と考えればよいのだ。そして、普通不純物半導体では極性を決めているたくさんあるキャリア(n型の場合は電子、p型の場合はHole)のことを多数キャリアと呼ぶ。

一方いくらn型半導体だとはいえHoleが全くないわけではない。ここが初心者の勘違いしやすいところであるが、オーダー的には多数キャリアと比すれば無視できるほどだが存在しているのは事実だ。こういうキャリアのことを少数キャリアと呼び、n型ではHole、p型では電子が少数キャリアになる。

n型半導体の少数キャリアのもとめ方は、質量作用の法則を利用する。つまり、pn=ni2という式からpをもとめるわけだが、nの代わりにドナー濃度を入れてやれば既知の数字からHole濃度を得ることができる。ni2をドナー濃度で割れば良いわけね。

p型半導体の場合も全く同じに考えて、今度はドナー濃度ではなくてアクセプタ濃度を使う。

この関係を下の式に簡単に表す。

不純物半導体キャリア密度

テキスト書きだとサフィックスがうまくつけられないので、上のように図示しないとうまく表示できない。

ここで電子やHoleのn、pの右下にまたn、pがついているが、これは「n型半導体の」とか「p型半導体の」といった意味である。まあ要するにnにnがついていたり、pにpがついていたりすれば、多数キャリアってことになり、反対にサフィックスが逆極性であれば少数キャリアってことになり、分かりやすいわけだ。

ここで重要なのは、不純物濃度で多数キャリアが決まるってこともそうだが、実は少数キャリアってのが存在していて、さらに数的には無視できるほど桁違いに少ないってことだ。

例えばS/Dの濃度などは18乗とか19乗に近かったりするわけだが、そうすると少数キャリアなんて、単純計算すれば100のオーダーにしかならない。それほど少ないのだ。基板濃度やWellの濃度なども15乗とか16乗はあるのでそれでも十分少数キャリアが少ないことが分かる。

でも、バイポーラトランジスタなどが特にそうだが、PNダイオードなどでもこの少数キャリアの挙動が動作の仕組みに大きく影響してくるのだ。

とまあ、こんな具合で今回は終了。ほんとはキャリア密度をポテンシャル表示するなんてのもあるんだけど、それはちょっと考えれば分かることなので省略して、次回はドリフト電流か拡散電流の説明。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:38| Comment(0) | TrackBack(1) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月02日

質量作用の法則

今回は、ちょっとだけ進んで、質量作用の法則と呼ばれているものを説明する。

前回のキャリア密度のところででてきた電子濃度、Hole濃度を掛け算してみる。

すると下の図の一番上の式のようになる。

質量保存

これを整理すると、2列目の式になる。この式のEc-Evのところに注目すると、なーんだこれってバンドギャップのことじゃん、ってことになる。そこでこれをEgとすると3列目の式になる。

ここまで来ると、電子濃度とHole濃度を掛け算した値はある温度(例えば常温の300K)では定数であることがわかる。だってEgは半導体材料が決まれば(この場合はSi)勝手に決まる値だし、キャリア密度のところで大事だからと述べたように、NcもNvも温度が決まれば定数になる。

こういうふうにnpが一定だよっていうのを質量作用の法則とか質量保存則なんていっているわけだ。

さらに、式を見ると分かるように、この式は真性半導体、n型半導体、p型半導体の別によらず成り立つ。式の右辺は温度が決まれば定数になるのだから、半導体の極性には何にも関係ない。

そして、真性半導体の場合はキャリア濃度はn=p=niなので、こいつを使ってあげると、式の4列目のようになる。実際に真性半導体のキャリア濃度を求めるには、前回出てきた式に有効質量、ボルツマン定数(k)、プランク定数(h)、温度などを代入して計算すればよい。

その計算結果のniを当てはめると、式の4列目の最右辺のようになるわけだ。

ここで大事なことは、電子濃度とHole濃度を掛け合わせたnpは温度が変わらなければ常に一定で、それは真性半導体のキャリア濃度であるniの二乗に等しい、ということだ。

こいつはかなり大事な式なので覚えとくと良い。まあ、np=ni2と簡単だから、覚えやすいだろう。

今回はここまで。次回はn型半導体のキャリア濃度。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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