2004年07月14日

拡散電位

さて、今回からPNダイオードにもどって、今まで説明してきた内容を使って電流電圧特性を導いていくとしよう。

そこで、最初に拡散電位の話。
これまでの話で、キャリアってのは拡散していって拡散電流ってのが生じるということが分かった。
さらに、p型半導体とn型半導体をくっつけると接合部分でキャリアの拡散が起こり空乏層ができることもわかった。
そして半導体中では発生再結合ということが起こっていて、キャリアが注入されれば急速に熱平衡状態に戻るし、熱平衡状態でも頻繁に発生再結合を繰り返している。

これらのことを考え合わせると、PN接合でできているバンドの曲がりによる空乏層周りがどういうことになっているかが分かる。つまり、最初の状態からキャリアが拡散することにより、空乏層ができ、あるところに行き着くと空乏層の両端に電位差ができ、そこで平衡状態を保っている、ということになる。

このときの電位差のことを拡散電位Vdと呼ぶ。それでは、この拡散電位とやらをもとめてみることにしよう。これまでPN接合キャリア密度のところででてきた図と式を再び使った以下の図で説明しよう。

拡散電位

まず左の図がPN接合のところで出てきた図で、n型半導体とp型半導体を用意し、くっつけたときのバンド構造を示している。すっきりさせるために電子やHoleの丸印は取り除いている。そして、n型半導体の伝導帯の下端をEcn、p型半導体の伝導帯の下端をEcpとしてある。

拡散電位に相当する部分は図中のEcp-Ecnになる。バンド図の場合はエネルギーなのでVdに電荷qをかけたものがEcp-Ecnになる。

ではまず、電子を例に考えてみよう(Holeでも逆に考えれば全く同じ)。n型半導体、p型半導体の電子濃度は右の上2式のようになる。これはキャリア密度のところでもとめた式だ。このとき注意して欲しいのはどちらの式もNcという定数が入っているということだが、これは電子に関してなので同じなのだ。キャリア密度のところのNcの中身を見てもらえればわかる。くれぐれもNa、Ndなどのドナー、アクセプタ濃度やp型だからNvなどと勘違いしないように。

次にそれぞれの電子濃度の比をとってみると3番目の式のようになる。NcとEfが消えて見事に簡単になっている。

そして、先ほど説明したVd=(Ecp-Ecn)/qにこの関係を代入してVdをもとめるとその下の式のようになる。これに、下に示した不純物半導体のキャリア密度のところで説明した関係を代入すると、その式の右辺のようになる。

これを良く見ると、拡散電位Vdってのは温度と不純物濃度(ドナー濃度、アクセプタ濃度)の関数ってことになり、常温ってことにすればDopingやインプラで注入した量が分かっていれば拡散電位は簡単に分かる。

そして、この拡散電位ってのは、電子がn型半導体からp型半導体に移動するのに必要な電圧ってことになる(当然Holeがp型半導体からn型半導体に移動するのに必要な電圧も同じ)。実はこのことが重要である。

とまあ、最初はこんな感じで終わり。この手の話になってくるとなかなか込み入って複雑になってくるので、少し話が長くなってしまう。次回はこの拡散電位からスタートしてPNダイオードの仕組みについて徐々に進む。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:20| Comment(8) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は、某メーカで超純水装置が常に稼動しているか
どうか保守する仕事を行っているものです。しかし
この仕事にも飽き、子供の大学入学金を稼ぐためにも
特許で一稼ぎしたいと考えています。
そこで、質問です。

SOI基板を用いてBOX層をゲート酸化膜、Si基板側をゲートとしてバックゲートのMOSを作りたいのですが、Siゲート(p-Si基板なので)なので、イオン注入しなければならないと悩んでいます。どういう風に行えばいいでしょうか?
またイオン注入しなかった場合、Siゲートではどういった問題が起こると考えられますか?

更に、CMOSでnウェルをつくる場合、活性化アニールは
Pイオン注入後と、S/D形成の際Bイオン注入後の二回行うのでしょうか?それともS/D形成後の一回でよろしいのでしょうか?

御指導のほどよろしくお願い申し上げます。

                             かしこ
                            ポルンガより
Posted by ポルンガ at 2004年07月14日 19:36
ポルンガ様

SOIのSi基板側をゲートに使うとした場合、従来型のシリコンのMOSトランジスタと同じようにするのならp-subのSiではなくてn-subのSiを使ったらいいんじゃないのでしょうか?最近の動向は知りませんがSIMOXのような方法を使うのでしたらn-subでも問題なくSOI基板はできるのではないでしょうか?

さらにゲートをn型にしなかった場合というのは、バンドの曲がりがなくなるのでトランジスタとしては多少特性が変わります。例えば従来型のCMOSでも中にはPMOSのところだけn型のPoly Siではなくてp型のPoly Siにしたいなんて要求もあるぐらいですから。これはバンドの曲がりによってPMOSでn型のPoly Siだとチャネル部分が表面層より深くなってしまうという理由だったと思います。反転層はなるべく浅いほうが良いわけですね。

といった感じだったと思うのですが良く覚えていません。じっくり考えればp型のPoly SiがPMOSとっていい理由もうまく説明できると思いますが、ちょっとビールで気持ちよくなっているのであいまいです。

Nwellの活性化はこの講座の最初のほうで触れましたが、インプラ直後のみです。とにかくS/D後の熱処理などとは比べもにならないほどNwellのDrive inは1200℃ぐらいと高温です。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年07月14日 20:37
ピッコロ大魔王様

早速の返答ありがとうございます。

PMOSの場合SOI層下のバックゲートとなるSi基板部分に
P+の領域を作る必要があるかと思います
がどのようにインプラしたらよいでしょうか?

斜めインプラでしょうか?それともSOI層を突き破る
ほどインプラしても良いのでしょうか。

お願いします。
Posted by ポルンガ at 2004年07月14日 21:43
ポルンガ様

PMOSの場合Si基板部分にP+の領域を作る必要があるというのがピッコロにはどうもよくわかりません。

一番上のSi島の底の部分という意味なのか、それとも酸化膜層の下のSi基板という意味なのでしょうか?

Si島の底でしたら、SIMOXのような方法ではなくはり合わせの方法で、その前に裏表面だけインプラするとか、出来上がってから高エネルギーでインプラするなんて方法しかないと思います。でも、SOIのSi島の場合基本的にFloatingの状態だったと思うのですが、この場合仮にContactをとるとしたら、どうやってContactをとるのか分かりません。

こっちが意図とするほうだと思いますが、酸化膜層の下の本当の基板側にP+の領域を作るとしたら、最初からEPIウェハーを使うぐらいでしょうか?バックグラインドが終わってから裏面インプラはできないですし。EPIのようなものを使って最後は金のようなものを蒸着あたりでつけて、コンタクトを取るって方法でしょうか。

でも、こうして書いていてもSi基板部分にP+の領域というのがよくわかりません。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年07月15日 08:41
はじめまして。ピッコロ大魔王様

n型半導体に添加する不純物密度を増加させると拡散電位はどのように変化するのでしょうか?ちなみにpn接合にかんすることで、バンド図でどのように変化するのか教えていただけたら、ありがたいのですが・・・
Posted by クリリン at 2004年09月06日 01:27
クリリン様

図中の式に不純物濃度を当てはめて、解いてくださいませ。具体的な数字を全部入れて細かく計算しなくても、どんな傾向になるかぐらいはわかります。

バンド図に関しても、ちょっとずつどういう変化をしていくのかを考えると、いろんなケースについてだんだん分かるようになります。

この辺の話は自分でじっくり考えて理解するのが大事だと思いますので、ぜひがんばってください。そのためのヒントが上のコメントです。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年09月06日 13:54
ピッコロ大魔王様

質問に対する返信ありがとうございます。
まだ、この分野は勉強し始めて間もないので、
いまいちバンド図に関してイメージが出来ません。
理解するコツなどありましたら、教えてください
Posted by クリリン at 2004年09月07日 00:59
クリリン様

コツというようなものではないですが、どこかに「別々の物質がくっつくと同一物質とみなされて、フェルミ準位が一致しないとまずい」というようなことを書いた覚えがあります。このようなこともうまく理解するためのポイントだと思います。

その状態からスタートして、バンドが曲がったりといったイメージが出てくるわけです。実際にはバンド図だとかバンドが曲がるといったことは人間が理解するために考え出された理屈なので、これじゃなければいけないというわけではないのですが、ルールとして同じものを使ったほうがコミュニケーションしやすいわけですね。

ここの講座は大学の講義ではないので所々適当なことを書いておりますが、「物理」のカテゴリの記事を最初から何度か読むと、コツのようなものがいくつかでていることに気がつくでしょう。
逆に多少間違っていてもいいから、なるべくイメージしやすいような表現にしてあるので少し「嘘」が出る訳です。

そういう意味では、現場でなければ分からないようなプロセスの細かい話などはそのまま信じてもらっても良いのですが、「物理」の話は多少のイメージが出来たらちゃんとした教科書でお勉強するのが良いと思います。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年09月08日 11:07
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