2004年06月18日

エネルギーバンド

やっぱり、ダイオードなどに行く前にエネルギーバンドの話をしておく。

細かく正確なことは、物理や半導体物理の教科書に任せるとして、だいたい大雑把にイメージしやすいように話を進める。だから、感覚的に分かりやすくするために、多少間違いもある。

まず始めに、パウリの排他律ってのがある。むかしむかし、量子論ができ始めたころには電子は原子核の周りをある軌道に沿って回っていると考えられていた。一番簡単な水素原子を例にいうと、プラスの電荷を持っている原子核の周りにマイナスの電荷を持った電子が1個回っている。

最初のころはこういう状態を3つの数であらわしていた。それが、主量子数、副量子数、磁気量子数である(詳しくは教科書)。ところが、パウリっていう人がもう一個状態があるんじゃないかと言い出した。それは、電子は軌道上を公転しているけれど、電子自体も自転しているんじゃないかということだった。電子の自転のことをスピンと呼んでいて、状態としては右回りと、左回りの2種類がある。

パウリの排他律とかパウリの原理っていうのは、同一軌道上には電子はスピンの違う2個の電子しか乗ることができないというものだ。ようするに、右回りのスピンの電子1個と、左回りの電子1個の計2個しか同一軌道上には乗らないってことだ。実際は量子論だから常に同じ状態にあるわけではないので、電子1個しかない水素でもスピンの状態が2個あるわけだ。

このときのスピンの状態をスピン量子数なんていっていて、パウリの排他律を難しくいうと、「1つの原子軌道に属する2つの電子は電子の量子状態を決める4つの量子数の全部を共通にはもちえない」、なんてことになるが、これじゃあなんだかよくわからんなあ。

ちなみに、今流行の素粒子論などでは、スピン量子数が整数倍のものをボーズ粒子と呼んでいて、例えば光子、パイ中間子などがある。スピン量子数が半整数倍(1/2、3/2、5/2などね)のものはフェルミ粒子と呼んでいて、電子、陽子、中性子なんかがある。

でだ、このパウリの排他律を頭に入れておいて、水素原子のことを考える。以下の図を見てもらおう。

エネルギーバンド

まず、1の水素原子の図で右側に一つの軌道に電子が2個乗った状態がある。これはスピンの状態がそれぞれ違う1個ずつだ。もしここで水素原子が2個あってどんどん近づいて行ったとする。すると同じエネルギーの状態の軌道が重なってしまう。図では横軸が原子間の距離で縦軸がエネルギーの高さだ。図の左側に行くと原子間の距離が短くなって、オーバーラップするようになる。

そのままだとパウリの排他律によってうまくいかない。なぜなら2つの水素原子の電子がもしどちらも右回りのスピンの状態だったら、重なった同一軌道上には存在できなくなる。そこでどうなるかというと、2つの軌道に枝分かれするのだ。これで一件落着。こうなれば、パウリの排他律をみたしている。それが図の左側の状態だ。

さらに図の2にあるように、もし4原子が近づいてきたら4個に枝分かれし、多原子なら無数に枝分かれする。この多原子の場合は右の図のように軌道が近すぎて飛び飛びのエネルギーの値をとるのではなくて、ある範囲全部になってしまう。こういう状態をエネルギーバンドという。少し物理をやったことがあればほとんどの人が知っていると思うが、電子ってのは飛び飛びのエネルギーの値しかとれなくて、この飛び飛びのエネルギーの状態がここの図での軌道の線になっている。

当然単結晶Siなどの場合は、ものすごい数の原子から影響を受けるのでエネルギーバンドの状態を取ることになる。その様子が図3である。Siなどは原子核の周りにある電子の数も14個と多いので、そのエネルギーバンドの数も多くなるわけだ。

まずこのエネルギーバンドのところで「?」になってしまう人が意外と多い。多くの場合いきなりエネルギーバンドになっている状態から話が始まるから、枝分かれのイメージなど持っていないからだ。

ちょいと長くなったので、今回はここまで。次は伝導帯のはなし。
posted by ピッコロ大魔王 at 09:40| Comment(3) | TrackBack(0) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
すごく分かりやすいです!
Posted by at 2009年06月09日 22:46
参考書などのバンド理論の項を行くら読んでも分からなかったのですが・・・

このページを読んでイメージがつかめました!
Posted by ゆうち at 2010年04月24日 00:02
画像が消えて解説がわかりません。
Posted by ボージャン at 2014年04月21日 22:02
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