2004年06月10日

Sputter装置

今回はスパッタ装置の説明をすることにした。

前回も少し触れたが、スパッタとはターゲットと呼ばれる金属の塊を用意し、Arイオンをぶつけて金属の粒子を物理的に飛び出させて、ウェハー上にくっつけるものである。

以下の図で説明しよう。

Sputter

まず、上の図だけを見てもらいたい。これは、スパッタ装置の簡単な模式図だ。順を追って説明する。
1.まず、図にはないが、簡単なポンプで空気を引く。
2.ある程度真空になったら(10Paぐらい)、クライオポンプで10の−5乗Pa以上の高真空にもっていく。
3.Arガスを入れる。このときも高真空になるように気をつける。
4.ウェハーをターゲットの近くにセットする。
5.ウェハーを暖めてAlがうまくくっつきやすいようにする。
6.電極に電圧をかけて、グロー放電を起こさせ、Arガスのプラズマを発生させる。
7.アーク放電によってプラスイオン化したArガスをマイナス電極にひきつける。
8.ArイオンがAlターゲットにぶつかり、Al粒子が弾き飛ばされ、ウェハーにくっつく。

とまあ、こんな感じになる。下の図は、ArイオンによりAl粒子が弾き飛ばされる様子を、分かりやすいように描いたものだ。

このスパッタで大事なのは、まず高真空にすること、他にはFilm系プロセスに共通のパーティクル管理かな。本来ならピカピカの金属光沢をした表面なのに、真空度が低下すると白濁する。こういうのを反射率の低下という。メタル工程の管理パラメータとしては、反射率と比抵抗、膜厚が重要である。

Alスパッタなどでよくありがちな不具合というと、Hillock(ヒロック)かな。これは、異常放電でウェハー温度が上昇し、Alの表面がぼこぼこになること。言葉のとおり丘のような岩のようなという形状をしている。ちょうど月のクレータのような形を想像すればよい。こいつがでかくなりすぎると、最後のPassivationの膜を突き抜けたりして困ってしまう。

ちなみに、ウェハーを温めて温度を上げるのはStep Coverage(ステップカバレジ)を良くするために重要なので、温度が上昇すること自体が悪いわけではなく、異常上昇がまずいのだ。ステップカバレジとはCVDやスパッタで成膜した場合の段差部分の被覆率である。普通にやると、どうしても平らな部分と段差部分では、段差部分がうまくカバーできなくなる。以下のようになる。

StepCoverage

と、まあ、スパッタに関してはこんなところかな。メタルの成膜には他にも蒸着って方法があるんだけど、これは最近ではほとんど使われないから無視。蒸着って言葉どおりだから、特に説明の要らないプロセスだしね。

次回はプロセスの続きの、Alエッチから。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:51| Comment(11) | TrackBack(0) | Film | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
あんたさん、何者?
すごいですな。
私も物理学を学んだものですが、専門的なこと意外は、よく分かりませんでした。
しかも卒業後、10数年経った今では、何も分からないようになりました。(笑
Posted by パラ坊 at 2004年06月10日 22:01
間違い
専門的なこと→専門分野
Posted by パラ坊 at 2004年06月10日 22:02

 はじめまして。
 本来、材料系出身なのですが、半導体関連特許も担当しそうなので、勉強することにしました。

 ここのHPはとても役に立ちそうです。ちなみにスタートは4月4日の記事からということでよろしいでしょうか?
Posted by 未登録弁理士 at 2004年06月10日 23:30
コメントありがとうございます。

パラ坊様
何者といわれても困るのですが、ただの人です。仕事を辞めて久しいのですが、なぜかおぼえております。

春にブログを始めたのですが、何をテーマにしようと考えていたときに、ウェブのページには半導体関係の詳しい解説のようなものが意外とあるようでないことに気がつきました。だから、少し忘れていて調べようとしても、ウェブに載っていないことが多いので、多分とか?とか文中でお茶を濁しています。

でも、この手のものがないのは、それで商売してる人が多いってことの裏返しかもしれません。

未登録弁理士様
はい、スタートは4月4日からです。最初のころの記事と最近の記事では整合性がないかもしれませんが、悪しからず。私も学生のころの専攻は材料系でしたが、半導体に関してはそっち方面から行くには、比較的入りやすいと思います。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月11日 08:05
私、電子工学や半導体工学はまったくの素人です。
でもとても参考になりますので毎回楽しみにしております。

ド素人ゆえお尋ねいたします。

「Plasma CVDとスパッタは同じプロセス装置なのですか?」

Posted by Dreambaby at 2004年06月11日 12:54
Dreambaby様

コメントありがとうございます。

Plasma CVDとスパッタは違う装置です。この後のPassivationの工程で保護膜としてNitride膜をPlasma CVDでつけることについて少し触れる予定です。

簡単に言うとCVDはあくまでCVDでPlasmaでもガスを化学的に反応させて上から降らせて堆積させます。一方スパッタは物理的力というかメカニカルというか、Arイオンをぶつけてそこで押し出されたAlなどの粒子をくっつけるものです。ちょうどビリヤードの玉のようなものです。

だから、CVDは化学、スパッタは力学なんてイメージでいればよいと思います。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月11日 15:18
お答えありがとうございました。誠に恐縮です。

>Plasma CVDとスパッタは違う装置です<

物理的気層成長(PVD)のPを"Pysical"ではなく"Plasma"と勝手に思い込んでP-CVDと理解しておりました(赤面)

重ねての素人しつもんお許しください。
と言う事は、Plasma CVDとはPECVD(Plasma Enhanced CVD)のことであり、PVDとは一般にスパッタリング工程と同じプロセスを意味するのですか?
Posted by Dreambaby at 2004年06月14日 08:27
Dreambaby様

そのとおりです。Plasma CVDはPECVDのことで、PVDはスパッタのことと考えればよいと思います。

ただし、正確に言うとPVDはPhisical Vapor Depositionの略なので、スパッタ法がPVD法の一種ということだろうと思います。他のPVDとしては、真空蒸着法などがあり、記事の中でも前に少し触れましたが、一般に蒸着と呼ばれているものがそれに相当すると思います。

真空蒸着は、あるターゲット(固体)を真空中で蒸発させ、その蒸発した粒子を基板上に堆積させる方法ですが、これはまさに気相成長法(PVDを日本語では物理気相成長法なんて呼びますね)ですよね。でも、自分の感覚としては、蒸着は金とか銀とか特殊な金属や、昔のAlの生成法という意識があり、記事では省いてしまいました。

自分も良く覚えていませんが、現役のエンジニアのころ、いつのころかPVDという言葉がよく出てくるようになりました。多少こんがらがりますね。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月14日 10:26
こんにちは。
googleでたまたま発見しました、通りすがりの者です。
いやあ・・・大変に体系化されているしこの分かりやすさはすごいですね〜。

私自身も半導体プロセス・設計・営業と10ん年経験してきたんですけど、転職先で同僚に「で、半導体って何なのよ」と尋ねられ説明しようも、分かってるはずなのにもごもごと口ごもるばかりでした。

回路設計に関しては、http://www.kumikomi.net/
なんかにうんちく系の参考資料はあるんですが、デバイスプロセスは「うーん。基本は日光写真ですな」てな感じでお茶を濁し(おい)、また理論的なとこは今更キッテルの固体物理学を掘り出して頭をひねってたりしました(汗)

これからも期待しています。blogは知人にも紹介させていただきたいと思います。
Posted by 卵の殻 at 2004年06月22日 11:11
卵の殻様

コメントありがとうございます。キッテルの固体物理学とは懐かしい名前ですねえ。

おっしゃるとおり、デバイスプロセス系のうんちく系というのはほんとに少ないですね。だから、実はこの講座の記事を書くときにたまに「?」なことがあって、検索して調べようとしても、良い参考資料はほとんど見当たりません。

当然、ゲートまわりなどのキイプロセスについてはたくさん引っかかりますが、そういう大事なものは結構ちゃんと覚えているので、あまり役に立ちません。

まあ、マニアックと言えばマニアックなのですが、そんなわけで、分からないところは結構いい加減で、「じゃないかな?」「こんなもんかな」などとお茶を濁しています。

というわけで、過度な期待は禁物なのですが、この講座を紹介までしてもらってありがとうございます。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月22日 15:36
上部に ターゲット 下部に テーブル 囲むように 筒状の 防着板です、材質は SUS304です 防着板 チャンバー 同アース で スパッタを 飛ばして チャンバー側に ダストが見られました 防着板には なにもありません 考えられる原因を 教えて下さい
Posted by 宍戸 孝行 at 2010年07月01日 15:59
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