2004年05月11日

インプラの原理

しかし、ここのBlogは朝10時台はほぼ死亡だな。
予告通り今回は前回の続きというか、保留項目のインプラ装置の簡単な原理とちょっとした小ネタを。

インプラってのはどういうふうにやっているかというと、まずB(ボロン)やP(リン)などのイオン種のソースが必要だ。イオン源、イオンソースなんていったりする。このソースってのはどういう形であるかというと、固体だったり気体だったりする。昔は違ったかもしれないが、一般的には固体ソースを使うんじゃないだろうか。

では、順を追って説明しよう。以下の図を参照して頂戴。

Impla

この絵、結構面倒だった。ま、そんなことはどうでもいいか。

まず、一番左のイオン源の中ではフィラメントがあって、そこに電流を流して熱電子を発生させる。その熱電子がソースである分子や原子にぶつかって、分解しイオン化する。例えばこの場合B(ボロン)がB+(ボロンイオン)になったとしよう。その後、イオン源の部屋の外にある引き出し電極ってのでイオンを引き出す。とっても簡単に言ってしまうと、B+に対してマイナスの電圧を引き出し電極にかければ、B+が引っ張られ、ビーンって飛んでくることになるわけだ。

その飛んできたのが、質量分析って部屋に入る。取り出したいイオン、この場合B+だけを出力するために、ここでは磁力がかけてあって、イオン自体を90度まげて飛ばすことになる。ここがポイントで、例えばB+より重いイオンは曲がりにくいため、図の右側の矢印のほうに飛んで行き、B+より軽い分子は曲がりやすく、図の左側の矢印に飛んでいくことになる。その結果、B+だけが真ん中の本線をたどることになる。

ソースの中でイオン化するっていっても、Bだけでも2価のイオンがあったり、わずかに残る不純物質(真空装置だからほんとは純粋にソース原子だけになる)の原子から別のイオンができたりと、最初から純粋にB+だけが取り出せるわけではない。

質量分析で曲げられて、邪魔なイオンは分析スリットでせき止められ、B+だけを次の加速管の中で加速することになる。まあ、図にあるようにウェハーと質量分析の出口のところに電圧をかけてイオンを引っぱって加速するわけだ。そして、最後にウェハーにドッカーンってぶつかって持っているエネルギー分Si原子を押し分けてもぐっていって止まる。この加速エネルギーを上げるとウェハーの深くに打ち込めるのがなんとなく分かるでしょう。つまりこの加速エネルギーで打ち込み深さを制御しているわけだ。

図の左下に書いてある式が、イオン注入量を設定する式である。注入量のことをドーズ量(Dose)とかDosageなんていう。ドーズ面積ってのは、ウェハーの面積であり、6インチとか8インチとかで値が変わってくる。普通は狙いたいドーズ量が決まっていると、それに対してどのくらいの電流を使うかを決めれば、この式からイオン注入の時間が決まってくる。電流は大きければ大きいほど時間が短くなって製造工程上は時間短縮でよいかもしれないが、ばらつきとか装置上の性能によってあまり極端なことはしない。例えば1秒と10秒では時間の測定誤差からいっても10秒のほうがいい。

で、装置の図のウェハーの周りのファラデーカップっていうのでイオンによる電流量を測定して、ちゃんと狙ったイオン数が打ち込まれたかを測定している。

この式に適当に数字を入れてみるとなんとなくわかるでしょう。ちなみに電流は通常Medium CurrentでuAオーダー、High CurrentでmAオーダーってところかな。だから10の12乗とか15乗とかのドーズ量でuA、mAの電流を設定してだいたい10秒ぐらいになれば適当かな。

ちなみに、深く打ち込みたいときは、2価のイオンなんかを使う。加速エネルギーにも限界があるから、その範囲内ということになれば、軽ければよりスピードが上がるよね。質量分析のところでB+の変わりにB++を取り出すようにすれば良い。このときは式のC(クーロン)の数字を変えないといけない。だって、B+ではイオン1個に対して電荷1だったのに、B++ではイオン1個で電荷2だから、同じようにカウントしてしまうと、イオンが少ないことになってしまう。ということは、Cは?。後は自分で考えて頂戴。参考までにB++ははっきりいってあんまり安定してないからめったに使わない。

加速エネルギーはだいたいkeVという単位で、通常ケブなんて発音する。

インプラもかなり奥が深くて、イオンを打ち込んでいるうちにウェハーがチャージしてしまう(帯電)のを押さえるために、エレクトロンシャワーなんてものを降り注いでいたり、まあいろいろ工夫を凝らしている。後は真空技術の塊であったりと、専門でやるには奥が深い。興味のある人もしくはこれから専門家になる人は専門書でみっちり学ぶ必要がある。今回示したものは、本当に基本中の基本の大まかなものである。

今回はこの程度で、インプラに関してもおいおい補足が出てくることだろう。さて、次回は何だっけ。そろそろ装置の予備説明はだいたいOKなのでプロセスとして次に進むか。Wellインプラの続きからだな。いやー、今日は史上最強に長かったかも。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:23| Comment(4) | TrackBack(0) | Impla | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ピッコロ大魔王様のページを拝見して、
プロセス全般について、大変勉強になりました。
ありがとうございます。

インプラの用語集のページがありますので、
ご参考までに、ご紹介させて頂きます。

【リンク】 イオン注入ディクショナリー
http://www.nissin-ion.co.jp/dic/yougo/index.html


インプラについて、さらにお知りになられたい場合など、
便利にお使い頂けるのではと思います。

(もし、不適切であれば、削除頂ければ幸いです。)
Posted by しゅう at 2004年07月23日 09:31
しゅう様

おー、これは非常に参考になりますねえ。
これだけきれいにインプラだけの用語をまとめてあるのは、見たことがありません。

紹介ありがとうございます。この講座を見ている方にとってとても役に立つと思います。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年07月23日 10:10
酸化膜に対するRpは教科書によくのっているのですが、窒化膜に対するRpはどれくらいなのでしょうか?
Posted by コウ at 2005年04月14日 23:38
お疲れ様です。

本当に勉強になります。

ところで今話題のプラズマドーピングってどんなメカニズムでどんなメリットがあって技術的に注目を浴びてるのか教えていただきたいです。

色々独学で本など読んでますが、
わからないことだらけで困っちゃいます。

よろしくお願いします。

Posted by Tack at 2011年07月09日 14:31
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。