2004年04月26日

洗浄工程

最近では定例のようになってしまった週末の休講を経て、再び再開。今回は前回の予告通り洗浄のお話。洗浄工程も半導体プロセスの中では重要な分野で、いまや一大分野を築いている。だから、ちゃんとしたお勉強は専門書で行ってください。まーとにかく歴史が古く、いろいろな変遷があり、複雑である。

さて、洗浄とはそもそも何のために行うのであろう?先日、この講座でもさらりと述べたが、目的とは大きく分けて2つある。

1:パーティクル(ゴミ)を減らす。
2:金属汚染を避ける。

以上の2つである。まずパーティクルに関してだが、半導体業界では、ウェハーの上、環境(工場内の空気中)内、装置内、薬液中などの中にあるゴミのことを一般にパーティクルと呼んでいる。で、このパーティクルは半導体製品を作るうえで、とても問題となる不具合を起こすことが分かっている。だから、何とかしてこのパーティクルを減らそうと考えているわけだ。

例えば、普通半導体工場内の製品を作る部屋のことを、クリーンルームと呼んでいるが、これはパーティクルが少ないという意味でクリーンなのだ。じゃあ、どうやっているか?まず空気をきれいなものと入れ替えるように循環させているのだが、その途中にヘパフィルター、とかウルパなどと呼ばれる非常に目の細かいフィルターをかまして、そこでパーティクルを捕らえるということをやっている。

クラス10(テン)とかクラス100とかいう言葉がクリーンルームの清浄度を表す言葉として使われるが、これは1立方メートルあたりの0.何μm以上のサイズのパーティクルがいくつあるかという単位である。そりゃーもうすごいレベルなのだ。普通のみんなが暮らしている部屋の環境は、おそらくクラス何万とかクラス何億といったレベルだろう。

装置内もしかり、使う薬品もしかりで、とにかくパーティクル管理というのが重要なのだ。しかし、ウェハーを加工していく段階でどうしてもウェハー表面にパーティクルが付着してしまうことが起こる。そりゃあ、クラス何とかといってもクラス0(ゼロ)じゃないからね。

だから、膜をつけるプロセスの前には必ずパーティクル除去のための洗浄をすることになる。まあ、エッチングなどの加工をした後のカスをとるときや、レジストをとった後にも洗浄するけど、重要なのは成膜工程の前だ。なぜなら、パーティクルがあった場合に、新たにその上に膜が積層されてしまったら、取り除けなくなるからだ。そうすると、そのパーティクルが悪さをしようが、それ以降はなすすべはなしとなる。

ちなみに、洗浄に使われている、半導体工場の水は純水と呼ばれていて、不純物が全くない水だ。まったくというと言いすぎかもしれないが、限りなくゼロに近い。普通の水道水にはカルキや多少の鉱物(金属)が入っているし、おいしい水と呼ばれる清水などには鉱物のイオンがいろいろ混じっている。しかし、この不純物が、パーティクルになったり、金属汚染のもとになる金属イオンになる。

だから、特殊な装置を使って、純水というのを作る。純水は不純物がないので、電気を通さない。だから、工場では純水のレベルを管理するために、水の抵抗(比抵抗だっけな?)を常時計っている。確か、11メグとかが基準値だったような気がするが、よく覚えていない。11メグというのは11MΩ(メガオーム)のことで、すんげー抵抗が高く、ほとんど電流を通さないってことがわかる。

2番目の金属汚染っていうのは、金属イオンがウェハー表面とかにつくと、簡単にウェハー内部に取り込まれたり、成膜された膜中にトラップ(捕捉されてしまうことをこう呼ぶ)されてしまうという意味だ。金属がトラップされてしまうと、本来電子やホール(正孔)だけがキャリアとして動作するはずのトランジスタなどに、可動イオンと呼ばれる動きやすい金属イオンが存在することになり、その動きで誤動作や、リーク電流(漏れ電流)が増えてしまうことになり、トランジスタとして機能しなくなったりする。すると、製品としては使い物にならない。

また、金属汚染というのはかなり厄介で、最初は適度に分散されているから、問題にならなくても、使っているうちにどこかに集まってきて、そのうちデバイスが壊れたりする。こういうことがないように信頼性試験と呼ばれる、高温高湿高バイアスの加速試験をするのだが、金属汚染が厄介だということに変わりはない。だから、何とかして金属を除去しようと苦労しているわけだ。

長々と説明してしまったが最後に、洗浄液について。数回前にも述べたが、洗浄液の有名どころでは3つぐらいある。

SC-1:NH4OH:H2O2:H2O(1:1:5)
SC-2:HCl:H2O2:H2O
硫酸加水:H2O2:H2O(ほどほど:大量)

SC-1はパーティクル除去が主目的で、ちょっとした化学反応で表面をわずかに削って(エッチングして)パーティクルとともに取り除く。SC-2は混合比率は忘れちゃったけど、金属不純物を取り除く。上記両者は、連続して行われ、温度はだいたい80℃とか90℃のはずだ。ちなみにこの一連の洗浄で、自然に酸化膜がウェハー表面にできてしまうから(実は純水につけておくだけでも、きれいなSi表面にはわずかに酸化膜ができてしまう)、すぐに希フッ酸(HF:H2Oが1:50とか1:100だっけな?)で自然酸化膜を取り除く。これで、一般的な成膜前の洗浄は終わり。

硫酸加水は、昔はパーティクル除去にも使われたけど、今ではかえってパーティクルを増やすなどという説もあり、レジスト除去後の残りかす完全掃除的に使われることが多いんじゃないか。これも、80℃ぐらいの温度だったような気がする。

そのほかにも、RCA洗浄等というものもあるが、これは昔、アメリカのRCA社が発明した洗浄方法で、今では使われているかどうか分からない。基本的にはSC-1と同じようなものだ。

以上説明した細かい機構や洗浄の反応の仕組みなどは、専門書で詳しく述べてあるので、そこで勉強していただきたい。

次回は何にしようかなあ。乾燥とか洗浄不足の不具合の話でも短くしようかな。続く。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:11| Comment(13) | TrackBack(0) | Etching | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめてホームページを拝見させていただき、何とも痒いところに手が届く解説に感動しました。私は学生で、水素終端Si表面に興味を持っている者です。質問ですが洗浄の過程で酸化膜ができますが、その際に除去したパーティクルは混入しないのですか?何分初学者なのですみません。もしよろしければ洗浄に関する専門書について教えていただけないでしょうか?
Posted by Harry at 2004年06月23日 00:22
Harry様

コメントありがとうございます。

洗浄工程の過程で除去したパーティクルというのは、全く混入しないと言えば嘘になりますが、ほぼ大丈夫でしょう。まず、大学などの小さい実験装置などでは難しいのかもしれませんが、一般的な半導体工場ではエッチャント(エッチング液)も純水も槽からオーバーフローさせています。

純水などはものすごい勢いで、この水量は毎分30〜50リッターとかいうレベルです。そりゃーもうじゃばじゃばです。水道水をバケツに1分間で30リッター入れることを想像したら分かると思います。

そんなわけで、パーティクルも取れたらすぐに流されてしまいます。当然エッチャントも純水ほどではないにしてもオーバーフローさせていて常に一定のパーティクル量以下にコントロールされています。エッチング系の装置では薬液は循環させていて、その間にフィルターをかませてきれいにしているわけです。そしてエッチャントを補給したり、何回か使ったら完全交換なんて感じでやります。

そして、洗浄中にできる酸化膜も、少しできてはエッチングされ、少しできてはエッチングされと、微妙な反応が繰り返し行われているので、酸化膜中にパーティクルが完全に取り込まれてしまうことも、ほとんどないでしょう。

洗浄に関する専門書については思い当たるものがありません。まあ、ものすごい高価な半導体プロセス技術とかクリーンテクノロジーなどという本の一項目として見ることぐらいでしょうか。あとは過去の論文をあさるぐらいでしょう。装置メーカーやデバイスメーカーは洗浄専門の部隊がありますから、かなりの数の学会発表論文があります(そんなことは言われなくてもわかっているとは思いますが)。
専門家なら洗浄のみについて解説している専門書も分かるかもしれませんが、私の場合、工場での経験と拾い読み程度なので、その手の情報は分かりません。すみませんね。

初学者ということですが、がんぱってください。

だれか、洗浄の専門書知っている方いませんかねー。(byピッコロ)
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月23日 10:07
このような本は如何でしょうか。
「はじめての半導体洗浄技術 ビギナーズブックス」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4769312121
Posted by 通りすがり at 2004年06月23日 11:57
非常にくわしい回答をしていただきありがとうございました。やはり工場レベルとなるとエッチング溶液の量がすごいですね。しかも循環型とは。恐れ入りました。わたしはプラスチック容器の中でフッ化アンモニウムで、5mm×5mmのウェハーを細々とエッチングしているのですが、この話をきくとエッチング溶液の交換、攪拌が非常に重要になってきますね。うーん、実験室レベルだとなかなか難しいですね・・ 本の推薦もありがとうございました。早速参考にしてみます。
Posted by Harry at 2004年06月23日 12:23
通りすがり様

本の紹介ありがとうございます。
最近はこんなシリーズの本が出ているのですね。

Harry様

実験用の小さい容器でパーティクルを増やさず、うまくエッチングするときのコツは、

エッチング溶液をケチらない
エッチングするたびに新しい溶液を使う
エッチング後はすぐに大量の純水で洗う

てことですかね。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年06月23日 13:21
洗浄関係のわかりやすい本を紹介します
「はじめての半導体洗浄技術」
工業調査会
2300円です。
水素終端Si表面といえば、フォト工程でレジストの密着性をあげるために表面を疎水化する処理を思い出します。Si-OHをSi-Hとするものです。

Posted by ogo at 2004年07月25日 17:26
ogo様

コメントありがとうございます。

ご紹介の本は、上で通りすがりさんが紹介してくれたものと同じですね。

複数の人が紹介してくれるということは、分かりやすいのでしょうね。
Posted by ピッコロ大魔王 at 2004年07月26日 09:36
洗浄液の有名どころ「3種」の中の「硫酸加水」ですが、「硫過水」(硫酸+過酸化水素)の間違いではないでしょうか。混合比は硫酸(〜98wt%)が「4」に対して過酸化水素水(30wt%)を「1」混合して、80〜120度C。通称「カロ酸」、「ピラニア洗浄」などとも呼ばれます。強力な酸化作用により、有機物汚染をCO2やH2Oに分解して除去。 SPM(Sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture)とも呼ばれます。
Posted by Puyallup Jimmy at 2005年06月13日 11:26
より深い専門書が必要になってきたら登竜門として以下がお勧めです。すげー高いです。

「Handbook of Semiconductor wafer cleaning technology」, Edited by Werner Kern, Noyes Publications.

アマゾンの洋書コーナーで「 」を入れるとすぐ引っかかると思います。
Posted by クリーニング店の店主 at 2005年06月14日 09:25
素朴な疑問があります。
応物に出席すると「水素終端」の研究とHFガスを用いた酸化膜のエッチングは10年以上も前から発表テーマとして常連になっています。
なんで?

洗浄メーカーとしてはWet Benchでガシャーと処理してIPAドライしてあげると割りと簡単に水素終端面を作れるので珍しくないんですけど、水素終端はデバイス性能や特定のプロセスでやっぱり非常に重要になるのでしょうか。。。
Posted by おっさん Part-2 at 2007年05月18日 17:10
SPRセンサについて勉強してる学生です。ガラス基盤に金を蒸着する前に、ガラスの洗浄をSC−1と同じ方法で洗浄したのですが、なぜ過酸化水素水とアンモニア水なのかが気になってます!ネットにもあまり詳しく記載されていないようなので参考書を探そうと思うのですが何かわかりやすい参考書をご存知でしょうか?
Posted by 学生 at 2007年12月27日 01:20
こんばんは。
有機物除去の際に用いられるSPMについてお聞きしたいことがあります。硫酸と過水を混合するとカロ酸が発生し、それが有機物(カーボン)を酸化しCO2とH2Oとして除去しているのですが、化学式にあらわすとどのようになるになるのでしょうか??化学を勉強していないものでどうも化学式が苦手です。。教えていただけないでしょうか??
Posted by ハクラー at 2008年07月09日 00:34
H2SO4+H2O2=H2SO5+H2O
Posted by 男大人 at 2014年07月03日 10:55
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