2004年04月23日

エッチング

さて今回はエッチングの話だ。エッチングっていうと半導体プロセスの場合、膜を削ることをいう。方法としてはウェットエッチとドライエッチの2種類ある。

ウェットエッチは、化学薬品の水溶液を使い化学反応によって膜を削るものだ。ドライエッチは、一般にはチャンバーという容器を真空に近づけ、エッチングガス(化学ガス)をプラズマ状態にし、電極の間で加速した反応ガスをウェハー表面にぶつけて、メカニカルな力と化学反応の力で膜を削るものだ。

大きな特徴としては、ウェットエッチは簡単で速い、でもドライエッチは難しく、Etching rate(エッチング速度)も遅いが非常に精度よく加工できる。その違いは、図で見たほうが良く分かるだろう。以下の図を眺めてもらおう。

エッチング

図中のレジストって描いてあるところは、そのうち説明するが、何かの膜を削るときに、マスクとして削りたくない部分を隠す有機溶剤でできた膜だ。それは置いといて、ウェットエッチとドライエッチの図を見比べて欲しい。ドライエッチは真直ぐすとんと下に削れているのに、ウェットエッチは横方向にも削れているのが分かるだろう。

この横方向に削れるというのが曲者だ。狙った線よりも余計に削れてしまうわけだからね。このように形状的に両者のエッチングには大きな差がある。

ここでは、まずウェットエッチの話をする。ドライエッチはまた後で。

ウェットエッチの対象の膜としては、酸化膜(SiO2)、窒化膜(SiN)、Al膜がある。まあ、最近ではAlをウェットで削ることはあまりないと思うが、昔はあった。ちなみに、洗浄工程を含めてウェットプロセスなんて言ったりもする。洗浄も広い意味ではウェットエッチに近いからね。

酸化膜のエッチング溶液としては、有名どころでNH4F:HF:H2Oの水溶液、HF:H2Oの水溶液がある。この混合比率は狙っているEtching Rateによって違う。分厚い酸化膜であまり加工精度を気にしなくても良い場合は、速いEtching Rateの溶液をつかい、薄い酸化膜で加工精度を気にするときには遅いEtching Rateの溶液を使う。温度はだいたい25度ぐらいの常温。

薄い膜で速いRateの液を使ったりすると、横方向にどんどんエッチングされたり、Si基板の表面を痛めつけたりで、いろいろと困ることがある。ちなみに横方向のエッチングのことをサイドエッチと呼んでいて、だいたい縦方向の8割ぐらいの比率で削れる。

窒化膜のエッチング溶液としては、リン酸溶液(H3PO4:HNO3)を使う。これは温度を高くして使うので、レジストは使えないから(レジストも溶けちゃう)パターニングに使うときは、いろいろ技が必要だった。でも最近ではパターニングではドライエッチを使うので、もっぱら全面剥離(いらなくなった膜を全部取っちゃう)のために使われる。温度は150度ぐらいだったっけなあ、忘れちゃった。ちなみに窒化膜はシリコンナイトライドなんだけど、普通は簡単にナイトライド膜っていう。Si3N4としないでSiNってするのは、必ずしも3対4できれいにできているわけではないのでこう書く。

Alのウェットエッチは取り除くだけなら、硫酸加水(H2SO4:H2O2)で溶けちゃうけど、加工として使うなら、ナイトライド膜と同じようにH3PO4:HNO3のリン酸溶液を使う。でも、今じゃあほとんどドライエッチだから、この辺は知らなくてもすむだろう。

ついでといっては何だが、ゲートに使うPolySi(後で出てくる)やSi基板もウェットで削ろうと思えば削れる。その場合、HF:HNO3の溶液を使う。でもこれも知らなくて良い。

基本的にはSiO2とSiNだけ押さえとけば今のウェットエッチはOKだろう。詳しい混合比率とか温度の条件は会社や工場によって違うのでなんともいえないが、専門の教科書などでは典型的な条件は載っているでしょう。Etching Rateも工場により膜質が違ったりするので、同じ組成の溶液でも一概には決まらない。検索するならウェットエッチとか酸化膜とかですれば詳しいのが出てると思う。

ちょっと長くなりすぎたが、この辺で終わる。ウェットに関してはプロセス技術の匠的なものがいっぱいあるので、そのうちおいおい説明が出てくるでしょう。次はちょっと洗浄の話でもしようかな。続く。
posted by ピッコロ大魔王 at 17:29| Comment(7) | TrackBack(0) | Etching | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
熱酸化膜のエッチングレートは、HFとBHFではBHFの方が早いですが、BPSG膜のエッチングレートが遅くなるのは、どういうメカニズムなのでしょうか?
Posted by 初心者 at 2006年01月31日 14:30
すいません、文型出身のエンジニア志望のおっさんです。リン酸による窒化膜エッチングの原理ってわかりませんか?
何故150℃以上だと容易に窒化膜って溶けるんでしょうか?
オッサン困ってます。教えてっ!ガリレオw
至って真面目ですが。。。
Posted by good son at 2006年05月08日 21:00
Alのウェットエッチはスピンエッチャーを使ってましたね。
薬液は酢酸で。
どういう理屈なのかエンドポイントを検出出来ました。
150mmウェハだとやたらと割れるので125mmが限界みたいでしたけど。
Posted by kitukitu at 2007年05月07日 06:24
とあるWet装置メーカーですが、
1) BHFはSiO2をエッチングする化学種HF2量が多くなるように調整されています。熱酸化膜はよく削れる。BPSGはドープしているものがあるので単純にSiO2の量としては少ない。その差が出ているのでは?CVD膜は不安定でこれというRateは一概に得られない。

2) 最近は160℃、165℃が一般的かも。
燐酸でエッチングするわけではなくて燐酸中に含まれているH2Oでエッチングされていると言われています。純度の高い燐酸では実はエッチング反応が進まない。H2Oの介在は重要。
学術的に燐酸ボイル中のH2Oの状態は解明されていないので、反応式は仮説の域を出ない。

3) AlのWet Etchingは酢酸ではなく、正確には燐酸と酢酸と硝酸の混酸でエッチングするのが一般的。パワーデバイス系では200mmでもAlのWet Etchをスピンで行っている。
エンドポイントはレーザー等の一定の波長が出るものを用いて始点と終点の光量変化の差分、或いは可視領域での波形の差分、などを検知してアルゴリズムを組む。


ご参考まで。
Posted by おっさん Part-2 at 2007年05月18日 16:54
化学にうとくて変な質問を書き込んでしまってすいません。

Alだと燐酸・硝酸・酢酸の混酸を使うべき、だとか、SiO2をエッチングしたかったらHFを使うべきということは、経験的には分かるのですが、
もし化学に詳しい人が居たら、「この薬液で、この膜がエッチングできるorできない」ということを、実験しなくても何かの基準を使って推測できるものなのでしょうか?
Posted by 化学にうとくて・・・ at 2008年10月15日 22:46
とっても良いサイトですね。勉強に成ります。有難う御座いました。これからも頑張って下さい。楽しみにしています。
Posted by songokuu at 2008年11月18日 00:15
すいません、僕の質問に対する気付いたのが2009年にあけてからでした。返信解説ありがとうございます。燐酸を触媒としたH2Oの沸点を上げてのエッチングなんですね。燐酸自体が反応作用してではなかったんですね。実に感謝です。何度も言いますが有り難うございました。
Posted by good son at 2009年01月20日 02:59
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