2004年04月12日

トランジスタの動作

いよいよMOSトランジスタの動作の話である。
ここではNchトランジスタで話を進める。

まず、ゲートにプラスの電圧をかける。例えば5Vの電圧が一般的なので、そう仮定する。電圧ってのもいっきに5Vになるわけではなく、徐々に5Vになるわけだ。まあ、人間の時間間隔からすれば一瞬というか、電圧をかけたのと同時だが、局所的な視野からはやっぱりだんだんと5Vになるわけだ。そのとき、まず最初にPsub部分のゲートの直下のところに空乏層というのができる。

Psubってのは正孔(Hole)がいっぱいある半導体なんだけど、ゲートにプラスの電圧をかけると、プラスと反発して正孔がどんどん押しやられていく。(厳密にはエネルギーバンドで説明しないといけないのだが、ここでは感覚的に分かりやすいように、イメージ的に説明する)すると、ゲートの下の部分のPsub基板はキャリアとしてのHoleがかすかすの状態になる。こういうキャリアがかすかすになった部分を空乏層と呼ぶ。図で書くとこんな感じだ。

空乏層

そして、さらに5Vに向かって電圧をかけていくと、ある電圧で、あらまあ不思議、ゲート直下の酸化膜に接したごくごく薄い領域にn+の領域が現れてしまう。これは5ボルトという電圧が基板にとってはとても大きいために、空乏層ができたあと逆にプラスの電圧によってマイナスの電荷を励起させられてしまうということから起こる。(これも厳密にはエネルギーバンドで説明しないといけない)イメージ的には、まず同一極性で反発するために、プラスのキャリア(Hole)が押しやられ空乏層ができ、さらに電圧をかけ続けると逆極性の電子をひきつけてn+の領域を作ってしまうといったところか。この領域を反転層と呼ぶ。図で見るとこんな感じ。

反転層

実際にはこの図とは違い、反転層はむちゃくちゃ薄い。ほんとにごくごく薄くて、ゲート酸化膜の下のわずかな厚さにできる。

この反転層ができる時の電圧を閾値(しきいち)電圧と呼んでいて、Vthと記す。このthはThresholdの略だ。普通Vthかスレッショルド(Threshold)電圧と呼ぶ。だから、先ほどから例に出した、ゲート電圧の5Vというのは、Vth(1Vとか3V)に十分足りる電圧として設定している。つまり、ゲート電圧がVthを超えると、反転層ができて、キャリア(電流)の通り道ができるわけである。そのときにS/D間に電位差があれば(前に述べたソースがGND,ドレインが5Vという状態でよい)、ソース、ドレイン間に電流が流れ、めでたくMOSトランジスタがONするわけだ。

ゲートにかける電圧はVthを十分に超えていないと、反転層が完全にできないので、動作が安定しなかったりするので注意が必要である。世の中には、パソコン関係で、よく3.3V動作とか5V動作とかあるが、結局これはそこの部品に使われている半導体のまたさらに部品であるトランジスタのVthに関係しているわけである。Vthが3Vの場合は、5Vの電源電圧でちゃんと動作をするが、3.3Vでは動作しない。またVthが1V程度であれば、電源電圧が3V程度でもちゃんと動作するわけだ。

まあ、世の中の電化製品は、電池で動くものなども、ちゃんと回路設計によって、Vthを電池2個分とかで動作可能などと設定しているわけだ。そして、そのVthは半導体工場でウェハーを作るときにちゃんとその値になるように制御して作りこんでいるという仕組みである。ちょっと、長くなっちゃったので、今回はここまで。

空乏層とか反転層とかちゃんと調べたい場合には、「空乏層」とか「PNダイオード」などの用語で検索すると、いっぱい見つかるでしょう。ほんとはPNジャンクションとかで基礎を理解するところをここでは一足飛びに説明しているので、多少の自己学習は必要であろう。

以前、子分たちには、「そんなこと自分で考えろ」とか「そんなことミジンコでもわかる」とか「そんなことアメーバでも分かる」などと言って、自分の頭を使うことを口をすっぱくしていったものだ。でも、「そんなこと猿でも分かる」というと「僕も猿まで成長したと認めてくれるんですか、むちゃくちゃうれしい」などと酒の席で言っていたのを思い出す。次も、もう少しVth関係の話をしようかな。続く。
posted by ピッコロ大魔王 at 22:52| Comment(5) | TrackBack(0) | デバイス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
神様ありがとうよくわかりました
Posted by at 2007年11月26日 21:41
まさに神
Posted by pitapon at 2008年01月09日 23:21
いつも勉強させて頂いております。ありがとうございます。質問させて下さい。

NMOSでもPMOSでもよいのですが、Well濃度を
濃くした場合のMOSFETのメリットやデメリットを
教えて頂きたく。

ご教授よろしくお願いします
Posted by whities-taka at 2008年01月24日 11:03
私も神だ
半導体にむしゃくしゃしとるわ
リレーでよかれ
アーメン
Posted by よしお at 2010年02月01日 02:50
トランジスタの説明が書いてある入門書10冊くらい読みましたが、この記事を見てはじめて心底から内容が理解できました。神様ありがとうございます。
Posted by 神様 at 2010年09月15日 21:49
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