2004年07月23日

強反転

それでは、前回でてきた理想MOS構造をベースに話を進めていこう。今後はすべて理想MOS構造が前提である。

今回はMOSキャパシタにバイアスをかけるとどうなるかを、バンド図を用いて説明する。以下の図を見てもらおう。

強反転

まずは一番左上の無バイアスの状態がスタートである。特に触れていないが、バンド図からわかるようにこれはp型半導体のキャパシタであり、Holeとアクセプタイオンがたくさんあることになる。

そしてゲート(トランジスタじゃないのでゲートって言うのも辺なのだが、今後もゲートって呼ぶ)にマイナスのバイアスをかけた場合が蓄積状態である。普通はAccumulation(アキュムレーション)ということが多い。

これはどういうことかというと、図の白抜きの丸が半導体表面のバンドが曲がったところに集まり、電子が電極表面に集まることになって、よく知られているコンデンサに電気を貯めた状態になるわけだ。

次はゲートにプラスのバイアスをかけた場合である。最初は軽くバイアスをかけた場合で、これが空乏状態で一般にはDepletion(デプレッション)という。これは言葉のとおり、半導体表面に空乏層ができるのだ。そして、半導体側のバンドは下に曲がる。下に曲がるってことは、さっきのAccumulatinと違ってHoleが存在しにくくなるわけだから(だから空乏化するわけなんだけど)Holeが蓄積されることもない。そして電極表面にはHoleが集まることになる。

このときの空乏層幅はXdとして、表面のバンドの曲がりの大きさをφsと呼ぶことが多い。このφsって通常表面ポテンシャルって言う。ちなみにここのバンド図では電荷qは省略して、縦軸はポテンシャルとか電位になっている。

じゃあ、このDepletion状態にさらにプラスのバイアスをかけていくとどうなるかっていうと、次の反転状態、Inversion(インバージョン)になるわけだ。これはどういう状態かというと、言葉どおりに反転した層が現れるということだ。

つまり、p型半導体なのに電子がいっぱい浮き出てきた層が現れるということ。バンド図で半導体表面にEc上灰色の丸があり電子と説明してあるが、これがそうである。要するにバンドが下に曲がることにより、真性半導体のフェルミレベルが今のp型半導体のフェルミレベルを下回ってしまうので、その下回った部分はほっといても電子に励起されてしまうわけだ。

もうお分かりと思うが、この反転層が現れる条件というのは、図の下の不等式のように、表面ポテンシャルφsがψBよりも大きくなったときである。上に言葉で説明した真性半導体のフェルミレベルと現在の半導体のフェルミレベルの関係だ。

このとき空乏層幅XdはDepletionのときよりも大きく伸びている。また、電極表面のHoleもさらに増えている。これは電極表面の電荷と半導体の反転層電荷、アクセプタイオンによる電荷とつりあわないといけないからなのだが、この辺の表面電荷の話は次回する。

そんでもって、もっともっと電圧をかけていくとどうなるかっていうと、次の強反転、Strong Inversoinになるわけだ。

強反転の場合は、条件は反転の場合とほぼ同じだが、唯一条件があって、それは表面ポテンシャルφsがψBの2倍以上にならないといけないってことだ。このψBの2倍以上ってのが大事である。真性半導体のフェルミレベルが現在の半導体のフェルミレベルを下回って、さらにその変化分をもう一度下まわるってことになる。

このとき表面の反転層にはさらに電子がたまっている。そして、この強反転の特徴はもうこれ以上空乏層が伸びないってことだ。つまり、φs=2ψBのときが空乏層幅の最大Xdmaxになるわけだ。それ以降は、いくらバイアスをかけても空乏層は伸びない。これはなんでかっていうと、バンドがもう曲がらないからである。

このあたりまでくると、バンドが少し曲がるだけで反転層の電子が指数関数的に増えるから、電圧をかけても電子をバンドを曲げなくても電子を増やすことによってつり合いが取れる。

トランジスタではこの反転層の電子がスパーっと掃けることによりドレイン電流になるわけなんだけど、そうすると前に出てきたVth(閾値電圧)ってのが上の説明でどんなものかだんだん分かってきただろう。そのうちもっとよくわかるようになる。

では今回はここまで。次回はさっき触れた、表面電荷のつりあい。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:55| Comment(5) | TrackBack(1) | 物理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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