2004年04月26日

乾燥

今日は大サービスで2回目やってしまおう。前回の予告の通り乾燥の話。まあ、短くてすむだろうから、2回目でもいいだろう。

乾燥というと、なんか普通にある言葉だし、そんなの大事なのかなあ、などという感想を持つかもしれないが(駄洒落ではない)、これが結構大事なのだ。

一般に乾燥工程というのは洗浄工程の後に行う。洗浄の最後は純水できれいに洗うんだけど、それをそのまま出して置いといただけでは、乾かない。当たり前だ。しかし、これが結構重要なのだ。ぬれたままだと、空気中のパーティクルも取り込んだりしてせっかく洗ったのに、また汚してしまう。

さらに最悪なのは、通称ウォーターマーク(Water Mark)なるものができてしまうことだ。洗浄のときにも少し触れたが、きれいなSiウェハー表面は水があるだけで、わずかながら酸化膜ができてしまう。これは、とても困る。本来酸化膜があるべきところじゃない所に酸化膜ができてしまうのだから、何か不具合が起こっても不思議じゃないし、実際に不具合が起こる。この水が残ったためにできる酸化膜のことをWater Markという。

また、パターン加工がされているウェハーというのは、高さ的に段差があるわけだけど、乾燥をしても十分乾燥されていないと、そのパターンの段差部分に水が残る。そのまま酸化炉とか拡散炉の高温熱処理を行う炉に入ってしまうと、水が残っている部分に酸化膜が余計についてしまうことがある。一般にはこっちのほうを特にWater Markと呼ぶんだけど、これは非常に困る。例えば後で出てくるゲート酸化膜を作る工程でこんなことが起こると、その部分の膜厚は異常に厚くなり、膜質も悪くなり、耐圧が悪くなったりする(耐圧もそのうち出てくる)。もうトランジスタとしては、ぼろぼろ。

イメージとしては、長方形のパターンの直角の角に、扇形の予期せぬ酸化膜のパターンができてしまうという感じだ。まるで扇状地みたい。

さて、乾燥には普通Spin Dryer(スピンドライヤー)という装置を使う。洗濯機のでかいような装置で、空気を引きながら、くるくる回しながら遠心力で脱水するような感じだ。一分間に何回転かは忘れたが、せいぜい1分か2分まわすと乾燥が終わる。ポイントは水から上げたらすぐ装置に入れて乾燥することだ。実は、もう一つ大きなポイントがあって、それはウェハー表面が、親水性になっているか疎水性になっているかによって乾燥がうまくいく行かないがあったりする。

一見、疎水性になっていたほうが水をはじいていいような感じもするが、実はそうでもない。疎水性になっていると、上に述べたパターンの角っこで、水が止まってしまいそのまま残る場合がある。それに対して、表面が親水性の場合は、遠心力でつーーって感じできれいにウェハーの端まで流れて行ってくれるので、こっちのほうが水がきれいさっぱりなくなったりするわけだ。うーん、深いねえ。

他にも、IPA洗浄というか、IPA乾燥というのがある。これはイソプロピルアルコールにウェハーを浸けて、アルコールの揮発によって乾燥させるという方法だ。これは、うまくやらないと、アルコールのカスが残ってしまうので、使わない場合も多い。注射の消毒するときも、乾燥すると白く跡が残ったりするでしょ。

結局また長くなってしまったが、乾燥に関してはとりあえずこれで終わり。だらだら書いていただけだから、長くなってもそれほど苦労ではなかったが。次回は、いよいよ最初のパターン加工、Wellがスタートかな。
posted by ピッコロ大魔王 at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | Etching | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

洗浄工程

最近では定例のようになってしまった週末の休講を経て、再び再開。今回は前回の予告通り洗浄のお話。洗浄工程も半導体プロセスの中では重要な分野で、いまや一大分野を築いている。だから、ちゃんとしたお勉強は専門書で行ってください。まーとにかく歴史が古く、いろいろな変遷があり、複雑である。

さて、洗浄とはそもそも何のために行うのであろう?先日、この講座でもさらりと述べたが、目的とは大きく分けて2つある。

1:パーティクル(ゴミ)を減らす。
2:金属汚染を避ける。

以上の2つである。まずパーティクルに関してだが、半導体業界では、ウェハーの上、環境(工場内の空気中)内、装置内、薬液中などの中にあるゴミのことを一般にパーティクルと呼んでいる。で、このパーティクルは半導体製品を作るうえで、とても問題となる不具合を起こすことが分かっている。だから、何とかしてこのパーティクルを減らそうと考えているわけだ。

例えば、普通半導体工場内の製品を作る部屋のことを、クリーンルームと呼んでいるが、これはパーティクルが少ないという意味でクリーンなのだ。じゃあ、どうやっているか?まず空気をきれいなものと入れ替えるように循環させているのだが、その途中にヘパフィルター、とかウルパなどと呼ばれる非常に目の細かいフィルターをかまして、そこでパーティクルを捕らえるということをやっている。

クラス10(テン)とかクラス100とかいう言葉がクリーンルームの清浄度を表す言葉として使われるが、これは1立方メートルあたりの0.何μm以上のサイズのパーティクルがいくつあるかという単位である。そりゃーもうすごいレベルなのだ。普通のみんなが暮らしている部屋の環境は、おそらくクラス何万とかクラス何億といったレベルだろう。

装置内もしかり、使う薬品もしかりで、とにかくパーティクル管理というのが重要なのだ。しかし、ウェハーを加工していく段階でどうしてもウェハー表面にパーティクルが付着してしまうことが起こる。そりゃあ、クラス何とかといってもクラス0(ゼロ)じゃないからね。

だから、膜をつけるプロセスの前には必ずパーティクル除去のための洗浄をすることになる。まあ、エッチングなどの加工をした後のカスをとるときや、レジストをとった後にも洗浄するけど、重要なのは成膜工程の前だ。なぜなら、パーティクルがあった場合に、新たにその上に膜が積層されてしまったら、取り除けなくなるからだ。そうすると、そのパーティクルが悪さをしようが、それ以降はなすすべはなしとなる。

ちなみに、洗浄に使われている、半導体工場の水は純水と呼ばれていて、不純物が全くない水だ。まったくというと言いすぎかもしれないが、限りなくゼロに近い。普通の水道水にはカルキや多少の鉱物(金属)が入っているし、おいしい水と呼ばれる清水などには鉱物のイオンがいろいろ混じっている。しかし、この不純物が、パーティクルになったり、金属汚染のもとになる金属イオンになる。

だから、特殊な装置を使って、純水というのを作る。純水は不純物がないので、電気を通さない。だから、工場では純水のレベルを管理するために、水の抵抗(比抵抗だっけな?)を常時計っている。確か、11メグとかが基準値だったような気がするが、よく覚えていない。11メグというのは11MΩ(メガオーム)のことで、すんげー抵抗が高く、ほとんど電流を通さないってことがわかる。

2番目の金属汚染っていうのは、金属イオンがウェハー表面とかにつくと、簡単にウェハー内部に取り込まれたり、成膜された膜中にトラップ(捕捉されてしまうことをこう呼ぶ)されてしまうという意味だ。金属がトラップされてしまうと、本来電子やホール(正孔)だけがキャリアとして動作するはずのトランジスタなどに、可動イオンと呼ばれる動きやすい金属イオンが存在することになり、その動きで誤動作や、リーク電流(漏れ電流)が増えてしまうことになり、トランジスタとして機能しなくなったりする。すると、製品としては使い物にならない。

また、金属汚染というのはかなり厄介で、最初は適度に分散されているから、問題にならなくても、使っているうちにどこかに集まってきて、そのうちデバイスが壊れたりする。こういうことがないように信頼性試験と呼ばれる、高温高湿高バイアスの加速試験をするのだが、金属汚染が厄介だということに変わりはない。だから、何とかして金属を除去しようと苦労しているわけだ。

長々と説明してしまったが最後に、洗浄液について。数回前にも述べたが、洗浄液の有名どころでは3つぐらいある。

SC-1:NH4OH:H2O2:H2O(1:1:5)
SC-2:HCl:H2O2:H2O
硫酸加水:H2O2:H2O(ほどほど:大量)

SC-1はパーティクル除去が主目的で、ちょっとした化学反応で表面をわずかに削って(エッチングして)パーティクルとともに取り除く。SC-2は混合比率は忘れちゃったけど、金属不純物を取り除く。上記両者は、連続して行われ、温度はだいたい80℃とか90℃のはずだ。ちなみにこの一連の洗浄で、自然に酸化膜がウェハー表面にできてしまうから(実は純水につけておくだけでも、きれいなSi表面にはわずかに酸化膜ができてしまう)、すぐに希フッ酸(HF:H2Oが1:50とか1:100だっけな?)で自然酸化膜を取り除く。これで、一般的な成膜前の洗浄は終わり。

硫酸加水は、昔はパーティクル除去にも使われたけど、今ではかえってパーティクルを増やすなどという説もあり、レジスト除去後の残りかす完全掃除的に使われることが多いんじゃないか。これも、80℃ぐらいの温度だったような気がする。

そのほかにも、RCA洗浄等というものもあるが、これは昔、アメリカのRCA社が発明した洗浄方法で、今では使われているかどうか分からない。基本的にはSC-1と同じようなものだ。

以上説明した細かい機構や洗浄の反応の仕組みなどは、専門書で詳しく述べてあるので、そこで勉強していただきたい。

次回は何にしようかなあ。乾燥とか洗浄不足の不具合の話でも短くしようかな。続く。
posted by ピッコロ大魔王 at 10:11| Comment(13) | TrackBack(0) | Etching | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。